栃木県那須町の河川敷で焼損した夫婦の遺体が見つかった事件で、警視庁などは７日までに死体損壊容疑で夫婦の長女の内縁の夫で会社役員の関根誠端（せいは）容疑者（３２）、夫婦の知人で不動産会社役員・前田亮容疑者（３６）を逮捕した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は８日、デイリースポーツに対し、被害者が飲食店経営をしていた東京・上野の現場周辺などでの取材を通して、事件について解説した。

　４月１６日早朝、会社役員・宝島龍太郎さん（５５）と妻・幸子さん（５６）の遺体が見つかり、合同捜査本部はこれまでに“仲介役”とみられる平山綾拳容疑者（２５）、“指示役”とされる佐々木光容疑者（２８）、“実行役”とみられる韓国籍の姜光紀（カン・グァンギ）容疑者（２０）と元俳優の若山耀人（きらと）容疑者（２０）をいずれも死体損壊容疑で逮捕した。

　だが、４容疑者と夫婦には面識がなく、佐々木容疑者は「ある人物から４月初めに『処理』を頼まれ、（平山容疑者に）指示を下ろした」と供述。合同捜査本部はさらに事件を主導した人物がいるとみて捜査していた。

　６日に逮捕された関根容疑者は宝島夫妻の会社でマネジャーとして運営に関わり、７日に逮捕された前田容疑者とは知人だった。遺体発見前日の４月１５日夜、東京・上野で夫婦と前田容疑者が歩く姿が防犯カメラの映像で確認されており、前田容疑者がレンタカーで品川区に移動し、午後１１時半ごろには関根容疑者を含む計４人でいる様子も写っていた。その後、夫婦が暴行を受けた疑いがある都内の空き家に４人で向かったとみられる。合同捜査本部は何らかのトラブルがあり、関根容疑者が事件を主導した疑いがあるとみている。

　犯行動機として、小川氏は被害者と関根容疑者が“身内”であるという関係性に注目した。

　「怨恨と金銭的な面の両方あると思います。（上野の）現場周辺で話を聞くと、幸子さんから仕事上のことで関根容疑者が叱責（しっせき）されることがあったということです。『もっと（仕事を）やってもらいたい』という幸子さんの思いと関根容疑者との間に乖離（かいり）があったのではないか。関根容疑者が佐々木容疑者と連日のように飲み歩いていたことから、幸子さんから注意を受けていたという話も現場で聞いています」

　「また、関根容疑者が指示役に金を渡したというのも妥当な線かと思います。義理の両親が亡くなれば、それなりの金額を相続できると考えた可能性もある。夫婦と関根容疑者の間で金銭的なトラブルがあるという話も動機になるのでは」

　小川氏は佐々木容疑者が逃亡先の沖縄で会ったという男女にも今月５、６日に取材した。

　同氏は「佐々木容疑者は沖縄に４月２５日に入り、上野で知り合った飲食店のオーナーと会っていた。那覇市内の飲食店では店の女性従業員にポーチに入っている札束を見せ、佐々木光の本名での名刺も所持していた。飲食店では２日間で約１５万円を使っている。これまで佐々木容疑者が沖縄になぜ行ったのかという疑問があったが、沖縄で接触した者の話から『点』が『線』として結び付いた」と明かした。

　逮捕者はいずれも死体損壊容疑であり、現時点で殺人容疑の逮捕者は出ていない。果たして、誰が手を下したのか。

　小川氏は「平山容疑者以外の者は現場に行っている可能性が高い。１人の犯行ではなく、実行犯は複数いるはず。若山容疑者と姜容疑者は夫婦がご遺体となった後で現場に呼ばれたのか、（殺害）にも手を出したのか。前田容疑者は勤務する不動産会社が管理する空き家に案内しただけで中にまで入らなかったのか、あるいは犯行に加わったのか。そういった点を６人の容疑者全員から別々に聞き出して照らし合わせる取り調べを繰り返すことになる。先に逮捕された４人から既にある程度の話は出ていると思われます」と分析した。

　今後の捜査の行方が注目される。