水木さんの描いた戦争作品「後世に」

 「ゲゲゲの鬼太郎」など独自の妖怪物や戦記で知られた漫画家の水木しげる(みずき・しげる、本名武良茂=むら・しげる)さんが30日午前7時18分、多臓器不全のため東京都三鷹市の杏林大病院で死去した。93歳。鳥取県出身。葬儀・告別式は近親者で行い、後日、お別れの会を開く。喪主は妻武良布枝(むら・ぬのえ)さん(83)。

 自宅のある調布市で水木さんと交流のあった人や関係者からは「戦争を描いた作品を後世に伝えなければ」との声が聞かれた。水木さんは太平洋戦争で激戦地パプアニューギニアのラバウルに送られ、玉砕を命じられたが辛くも生き延びた。「総員玉砕せよ!」など、壮絶な戦争体験を反映した作品も数多く残し、戦争の悲惨さを訴え続けた。

 調布市の「鬼太郎茶屋」店長の金城史朗さん(34)は、年に1回ほど店に足を運んでいた水木さんが、子供と楽しそうに話をしていた姿が印象に残っている。金城さんは「戦争を扱った作品にはヒーローも登場せず、むなしい感情しか残らないものもある。リアルな事実を伝えたい気持ちが大きかったのではないか」と話した。

 調布市で8~9月に開かれた「水木しげるの戦争と新聞報道展」には1万人近くが足を運んだ。「ラバウル戦記」「総員-」などの作品から複製原画を約20枚展示。言論統制された新聞と、水木さんが描いた戦争の最前線を比べることで、報道されなかった現実を浮かび上がらせるのが狙いだった。

 企画を担当した調布市文化・コミュニティ振興財団の河合理美さん(28)は「誰でも読める漫画で最前線のことが分かるのは貴重。新聞報道ではとらえていない部分がある」とみる。

 水木さんは「総員-」の後書きに「戦記物をかくと、わけのわからない怒りがこみ上げてきて仕方がない。たぶん戦死者の霊がそうさせるのではないかと思う」と記している。

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