巨大被ばく事件の実態描く異色の映画

 愛媛県にあるローカル局・南海放送のディレクターが監督を務める、「もう一つのビキニ事件」とも言うべきテーマを扱ったドキュメンタリー映画「放射線を浴びたX年後2」が完成し、21日の東京・ポレポレ東中野から全国で順次公開される。

 歴史から消し去られた巨大被ばく事件の実態を12年にわたって取材、発信する伊東英朗監督(55)に事件解明に向けての思いを聞いた。

 1954年に太平洋のビキニ諸島で行われた米国による水爆実験で第五福竜丸が被ばくしたことは「歴史」として認知されているが、それ以外にも数多くの日本漁船が被ばくし、日本にも深刻な汚染が及んでいた事実は、今ではあまり知られていない。

 伊東監督は、高知県の被災漁師たちの調査活動に取り組む元高校教師らとの出会いをきっかけに取材を開始。被ばくを公表もできず、正確な情報も補償も受けられず、置き去りにされた人たちを掘り起こしている。

 テレビ局の制作部に所属してバラエティーやグルメ番組なども制作しながら、畑違いのテーマに取り組み始めて12年。「ディレクターとしては良くないんでしょうね。踏み込み過ぎてる」と冷静に分析するが、「でも、放っておくと誰も動かない。この事件は絶対に伝えていかないといけないこと。知らん顔するのは加害者と同じですから。解明したいし、解決したい。関わって一緒に動きを作りたい」と訴える。

 取材した番組は当初ローカル枠内で放送されていたが、その後、日本テレビ系列の「NNNドキュメント」で全国放送され、集大成として2012年に「放射線を浴びたX年後」を公開。地方発の衝撃の告発は数々の賞を受け、全国200カ所で自主上映された。

 映画第2弾は、前作を見たことで、漁師だった父の死に疑問を抱いた女性が、自ら被ばく漁師たちの聞き取り調査に加わり、真相を追う姿を描く。伊東監督は「全国でこうした動きが出てきてくれれば」と歓迎するが、「政府や行政が動かざるを得ない状況につながっていかないと」と力を込める。

 2011年3月に東日本大震災が起こったことで、その思いは強まっている。

 「被ばくした乗組員が死をもって伝えていることを精査して、きちんと解明しないと。いろんな角度から見ていけば、福島がこれから何をしなければならないかも見えてくる。早くやらないといけないんです」

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