【3】甲子園出場の夢破れ日体大へ
「室田淳の鉄人トーク・第3回」
今の若い選手はみんなジュニア上がりだけど、自分がゴルフを始めたのは大学に入ってから。高校まで野球をやっていてポジションは投手。甲子園に行きたかったし、プロの夢もあった。でも、2年の時に右足を骨折、3年の時は肩を壊して野球の道は断念した。
日体大では、体も大きかったからアメリカンフットボールでもやろうかなって考えてたんだけど、クラスの同級生にゴルフ部員がいて、彼に誘われたのがこの世界に入ったきっかけ。他のスポーツと違って、ゴルフの場合はそんなに経験者がいるわけでもないから、初心者の自分でも頑張れば試合に出られるかなって思ったんだ。
初めてコースに出た時はハーフ60ぐらいたたいたけど、夏の合宿ですごく上手になったね。1カ月ぐらい泊まり込みで昼はキャディーのバイトをしながら、朝夕にラウンドするわけよ。おかげで1年でハーフ30台が出るようになって、2年生でレギュラーになれた。
入学当時の日体大はとても弱くて、Fブロック(6部)に所属していたんだけど、自分が4年の時にはAブロックまで昇格。個人戦でも全国レベルの大会に出られるようになって、どんどんゴルフが楽しくなっていった。
うちは両親、祖父母とも教員をしていたので、最初は自分も体育の教員にでもなろうかと思っていた。でも、教員やってたら月に1回ゴルフができるかどうか。それじゃ、思い切ってプロゴルファーを目指してみるかってことに決めたんだよ。
卒業後はゴルフ練習場に就職してプロテスト合格を目指したけど、練習に来ているアマチュアへのレッスンが忙しくて、自分の練習どころじゃない。土日なんて朝から晩まで100人ぐらいに教えなきゃいけないんだから。で、プロテストに4回続けて落ちて、このままじゃいけないと思って、練習場を辞めてラウンド中心の練習に切り替えたら、翌年のテストに合格。やっとプロとしてのスタートが切れたけど、そこから初優勝までが、また長い道のりだった。
(協力 ザ・リッツ・カールトン大阪)
◆室田 淳(むろた・きよし)1955年7月26日、群馬県出身。太田高を経て日体大に進み、19歳からゴルフを始める。27歳でプロテストに合格し、91年のブリヂストン阿蘇オープンで初優勝。ツアー通算6勝。昨季は日本オープンで6位に入るなどし、史上最年長59歳にして賞金シードに返り咲いた。シニアツアーでも通算12勝を挙げ、06、07、13年と3度賞金王に輝く。家族は妻と3女。180センチ、80キロ。サメジマコーポレーション所属。