「大相撲夏場所」（１３日初日、両国国技館）

　左大胸筋負傷などで６場所連続休場から再起を期す横綱稀勢の里（３１）＝田子ノ浦＝が１日、夏場所へ向け東京都江戸川区の部屋で稽古を再開。元野球少年は前日、４月３０日に約１２年ぶりに日本球界復帰星を挙げたプロ野球・中日の松坂大輔投手（３７）に感動。故障から復活した姿に大いにパワーをもらった。この日は弟弟子の高安（２８）を三番稽古で圧倒し、状態に自信を見せた。

　松坂の復活星は天下の横綱稀勢の里の心も震えさせた。

　「コメントも良かったですよね。『小さい子は誰か分からない。顔を覚えてもらいたい』って。あれだけ有名なのに。個人的にうれしかった。みんなもそうでしょ。気持ち良かった」

　元野球少年の稀勢の里はエースで４番。中学時代は美馬学投手（現楽天）と投げ合ったこともある。「松坂世代ですから。ＴＶで見ていた」と、６歳年下ながら「松坂世代」を自任。それほど平成の怪物はあこがれの大スターだった。

　一番の記憶を問われると「ＰＬ戦」と即答した。９８年夏の甲子園準決勝、松坂擁する横浜が延長１７回の末、ＰＬ学園を下した伝説の死闘。上がり座敷に座って力説し、決勝２ランを放った横浜・常盤良太の打ち方を実演、再現までしてみせた。

　左大胸筋、左上腕部、左足など次々と負傷し６場所連続休場。右肩、右肘の深刻な故障を乗り越えた松坂の姿が自らに重ならないわけがない。「もともとのレベルが違う」と謙そんしたが「（自分は）コツコツと」と不屈の魂は横綱の胸に、しっかりと刻まれた。

　この日、夏場所へ向け部屋での稽古を再開。三番稽古は４番全勝としたところで高安が右肩を痛め打ち切りとなったが、左四つの型から圧倒した。その後も基礎運動でみっちり汗をかくなど、充実の２時間の調整だった。

　「動きはいい感じ。だいぶ体は張っていたのでね。巡業でいい稽古したし、少し休んでより良くなった」。再起へ日ごとにあふれる自信。松坂の次は角界のヒーローがよみがえる。