【スポーツ】真央も宮原も努力が支え

 フィギュアスケートの練習を見ていると、ブレードが氷を削る「ガリガリガリ」という音に最初は驚く。華麗な演技を支えるその体にいかに負荷がかかっているかが、鈍い音に表れている。

 昨年末の全日本フィギュア選手権。フリーで巻き返して3位に入った浅田真央(25)=中京大=の公式練習でも、「ガリガリガリ」という音が激しく聞こえた。ジャンプに失敗しては思い詰めたような表情で氷を削る。復調の兆しが見えないと、その音が大きく聞こえるのは気のせいだったのか。

 1年のブランクから復帰した彼女の現状については、取材現場でもあらゆる意見があった。その中である関係者が言っていた言葉が心に残った。

 「1年休んだことで真央の力が落ちたと言うなら、それはそこまで彼女がいかに努力を積んできていたかの裏返し。そんなに簡単に結果は出ない」

 髪の毛1本分の踏みきりの狂いがジャンプを左右する世界だ。1日氷に乗らないと、勘が戻るのに3日はかかるというスケーターもいる。ブランク明けにすぐ元通りにいくほど甘くはない。「天才」浅田を支えていたのは、その陰にあった過酷な練習だった。だからこそ、今季結果を求めるのは酷。年齢的に限界だと決めつけるのは早いというのだ。

 一方、この大会で女子2連覇を果たした高校生の宮原知子(関大高)は、17歳とは思えない完成度の高い演技を魅せた。一歩リンクを降りると取材ゾーンでは消え入るような声で質問に答える。練習場ではお弁当を食べる時にも小さなこどもたちに隅に追いやられてしまうという内気な性格だが、浜田美栄コーチは「普通の子でもこれだけ努力すればここまで来られると、逆に私が教えてもらった」と感無量だった。

 「練習の虫」だという宮原は、今回の全日本に備えてどんな滑走順にも動じないための想定練習を完璧にこなしていたという。1グループ6人の第1滑走と第6滑走では、演技時間が30分程違ってくる。整氷、6分間練習後、1番から6番まですべての滑走順を想定し、アップ開始時間やスケート靴をいったん脱いで再び履く時間まで、何度も練習を重ねたという。そのおかげで「自信ができたのか、普段と変わらないでできた」と同コーチは振り返った。

 華麗な衣装に身を包み、最後まで笑顔を絶やさないスケーターたちは、繊細に神経を研ぎ澄まし、あらゆる努力を尽くして氷の上に立っている。スポットライトが当たっていない時の彼女たちを想像しながら、フィギュアシーズンの後半戦にも注目したい。(デイリースポーツ・船曳陽子)

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