冨田えん罪主張も潔白証明の前途は多難

 韓国の仁川で行われた仁川アジア大会で、韓国の通信社のカメラを盗んだとして略式起訴された競泳男子の冨田尚弥(25)が6日、名古屋市内で会見を開き、同件について“えん罪”を訴えた。カメラは全く面識のないアジア系の男に無理やり入れられたと主張。韓国警察の再捜査を求めたが、実現性は低く、潔白証明には大きなハードルが立ちはだかる。また、競技については現役引退の可能性を示唆した。

 日本代表選手による大会期間中の窃盗という前代未聞の事件は、えん罪主張というこれまた前代未聞の形で新たな展開を迎えた。黒のスーツ姿で会見に臨んだ冨田は、国田武二郎弁護士による約1時間の概要説明を伏し目がちに聞いた後、ようやく口を開いた。「僕はカメラを盗んでいません」。はっきりと前を見据えて言い切った。

 冨田の主張によると、競技会場で他の選手の練習を座って見ていた時、面識のない短髪のアジア系の男に突然手首をつかまれ、「黒い塊」をバッグに入れられたという。その場ではカメラと気づかず、すぐに取り出さなかった理由については「ゴミだと勘違いした。ゴミ箱がなく、選手村で捨てるしかないと思った」と話した。

 また、韓国の警察の取り調べで、犯行を認めたことには、警察から「応じないと、日本に帰れない」と言われたことなどを挙げ、「自分の心が弱く、やってないと言えなかった」と反省。「(男に)何かを入れられた時点で、すぐに取り出せばよかった」と後悔の念も吐露した。JOC、日本水連などの処分には「迷惑を掛けたのは事実」として受け入れる方針を示した。

 えん罪を主張したものの、潔白証明への前途は多難だ。反論材料は冨田自身の主張しかなく、現状では韓国警察が自主的に再捜査してくれることを待つしかない。今後、判決文が韓国から送られてくる予定で、1週間以内に不服を申し立てれば裁判となるが、韓国の国際弁護士を雇う場合、着手金で300万~600万円を提示されており、本格的に争えば、1000万円以上掛かる。所属先のデサントを解雇された冨田には難しい状況だ。

 また、選手としてはリオ五輪への道はわずかながら開かれているが「裁判をしながら、世界と戦うためのきつい練習はできない。拠点の米国で練習をするにも、お金が掛かるので難しい」と、現役引退の可能性を示唆。汚名を背負った25歳のスイマーに厳しい現実が立ちはだかっている。

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