香川・篠原 腕が吹っ飛んでも投げたい
【香川・篠原慎平投手】
5日、雁の巣。12日ぶりの先発マウンドを前に、篠原慎平は今年一番とも言える不安の中にいた。対戦相手がソフトバンクであることでも、同い年のドラフト1位、東浜巨との対戦を前にしているからでもない。
「この前(登板機会が雨で)14日空いて。そのときに感覚も全然ダメで、今季一番悪いピッチングしてたんで」
前回の失敗を取り戻すために、できる限りの調整を行った。5回を投げ1失点。0対2で負け投手となってしまったが、得たものはあった。
「ちょっと前から、身長を生かして角度のある球を投げるというのをやってて。そこに関してはハマった感じがありました。映像で見ても角度のある感じがあったので」
肩の故障で、約3年間マウンドに戻って来ることができなかった。昨年愛媛を自由契約になり、練習生として入団した香川で復活を目指した。
「過去の実績なんか、真っさらなわけで。でも、僕のことを知ってる人はそういう目で見てきたと思うし。『昔は良かった』って言われるのが…」
以前の姿はもう求めていない。今の自分にできることを。香川・伊藤秀範コーチの指導の下、テークバック時の腕の上げ方を小さくした。今年7月のことだ。軽く投げたのに球速が出る。リリース時、指をバチッ!と弾く感覚が戻ってきた。
「練習生で入って、2月に登録してもらって。先発任せてもらえるようになって。それがゴールでトライアウトを受けたつもりでもないんで」
リーグチャンピオンシップの先発マウンドに登りたい。首脳陣からも、チームメイトからも信頼を得る投球がしたい。
「去年、一昨年と友達を1人ずつ亡くしてるんです。あいつらのためにも頑張らなあかんって」
次にケガをすることも恐れてはいない。腕が吹っ飛んでもいいから投げたい。それくらいの気持ちでマウンドに登っている。