広島・中村奨成 満塁走者一掃打!代打で大仕事 新井采配ピタリ的中「格好良かったですね、奨成」 交流戦5割締め2位タイ浮上
「広島5-2楽天」(22日、マツダスタジアム)
広島の中村奨成外野手(26)が代打で大仕事をやってのけた。2点を追う四回2死満塁の好機で登場し、左越えに走者一掃の適時二塁打。値千金の一打で新井貴浩監督(48)の起用に応えるとともに、広陵の後輩にあたる楽天のドラフト1位・宗山の目の前で先輩の威厳を示した。チームは交流戦を9勝9敗で終え、貯金を1としてDeNAと並んで2位に浮上した。
真っ赤に染まるスタンドが大きく揺れた。最高潮に達した熱気を体感しながら、中村奨はド派手に三度、右拳を振り下ろした。「今月、なかなか思うような結果を出せていなかった。その辺の悔しさはあったので」と期する思いを込めて、まばゆい輝きを放った。
到来した好機に暗雲が垂れ込みかけていた。2点を追う四回は無死満塁と攻めたが、1点も奪えないまま2死満塁。「ランナーをかえせるようにだけ(考えた)。甘い球を1球で捉えられるように、という入りをした」と極限まで集中力を研ぎ澄ませて藤井の初球、甘いツーシームを捉えた。
ライナー性の打球はグングン伸びて左翼・ゴンザレスの頭上を越えてフェンスを直撃。ベンチは総立ちになり、3人の走者が一気に生還して逆転。うねりのような歓声が、背番号96に注がれた。
今月のスタメンは5試合にとどまり、最近は同じ外野手の大盛が躍動。7戦連続でスタメンを外れたが「とにかくバットを振る量を落とさないように。いつ(試合に)出てもいいように、常に準備はしていました」。抜かりなく戦闘態勢を整えてきた先に、最高の歓喜が待っていた。
ベンチでガッツポーズを繰り出した新井監督は「2アウト(満塁)になったら奨成行くよ、と回の頭から言っていた。嫌な空気だったけど、ひと振りで一気に変えてくれましたね。格好良かったですね、奨成」と絶賛の言葉を並べた。
初戦に続き、この日も広陵の3学年後輩にあたる楽天のドラフト1位・宗山が「6番・遊撃」で先発出場。後輩の目の前で快音を響かせ「宗山の前で打てたので、ちょっとホッとしています」と胸中を明かした。広陵出身のプロ選手は毎年、年末に母校で行われる野球教室に参加するのが恒例となっており、「宗山の前で打てなかったら、年末どんな顔して会えばいいのかなと思ってましたけど、打てて良かったです」と息をついた。
試合前には、秋山が定期的に行う「ひとり親家庭」の招待企画が実施された。母子家庭で育った中村奨は秋山の思いに共感し、写真撮影に参加。「応援してくれる人もいるので、何とか期待に応えられるように。活躍して、ああいうことができれば」と誓いを新たにした。チームは最高の形で交流戦を終え、2位に浮上。成長の跡を示す若武者が、しびれる戦いの中で爪痕を残していく。





