機動力野球の本家?広島に走塁革命は起きるのか ベンチ責任で意識づけを~高代氏見解
今季、チーム盗塁数が26個に終わった広島は、秋季キャンプで走塁改革に取り組んでいる。リーグ1位のチーム打率(・257)に反する得点力の低さ。デイリースポーツウェブ評論家の高代延博氏は「走塁を選手任せにすると意識が低下しがちになる」と語り、機動力は“ベンチ責任”と説いた。
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新井貴浩氏を監督に迎え、新しいチームとして再スタートを切った広島だが、着手すべき課題は結構多い。多少時間はかかるだろうが、しっかり取り組まないと上位浮上は厳しくなるだろうね。
今季のペナント予想で私は、広島をダークホース的な存在としてAクラス入りも十分可能だと考えていた。
投手力があり、若手の野手が伸びてきているのがその理由だったが、いざフタを開けてみると、1年を通して活躍した選手が少なかったね。
先発ローテーションを任された投手が、期待したほどの成績を挙げられなかったし、栗林へつなぐまでの中継ぎ投手の層の薄さにも苦しんでいた。
さらに内外野のポジションがしっかり固定されなかったことも、チームとして安定した力を出せなかった原因でしょう。
西川や床田の故障離脱は痛かったが、レギュラー選手がはっきりしないという印象は拭えず、そこが弱みだったとも言える。
三塁手としての坂倉は、どっちつかずだったかな。6月までは試合途中からマスクをかぶることもあり、強いチームの野球ではなかったね。
その中で最も重くみるべきはチーム盗塁数の少なさ。26盗塁は球団最少記録のようだが、耳を疑うような数字だ。“機動力のカープ”はどこへ行ったのか。高橋慶彦や正田耕三、野村謙二郎、緒方孝市ら毎年のように盗塁王を出していたころを思うと、それこそ隔世の感がある。
機動力は盗塁に限らず、走塁全般にわたる大事な攻撃の道具であり、点を取るためには不可欠な武器。単純に脚力だけを求めているのではなく、まず意識することが大事だ。
私はコーチ就任後初めて選手を前に話をする際、必ず真っ先にこの走塁の重要性を説くんです。そして言い続ける。なぜなら走攻守において、選手任せにすることで低下していくのが一番早いのが、走塁に対する意識だからだ。
今回、ヤクルト時代に2度、盗塁王になった福地寿樹氏が広島のスタッフに加わり、秋季キャンプで選手に走塁技術を教えている。
彼とは私がコーチをしていた広島時代に一緒だったが、ウエスタン・リーグで4年連続盗塁王になったほど、走力に秀でたものがあった。
長身でストライドが大きく、リードも大きいところが緒方によく似ていた。スタートの瞬間から一気にトップスピードに入る特長もそっくり。当時は「走るだけなら負けません」と話していたが、その言葉どおりの実力でタイトルを手にしたのは立派だった。
広島という球団は脚力のない選手は取らないから走れる選手は多いはず。なのに野間の7個がチームトップでは少なすぎる。小園や菊池はもっと走れるはずだし、大盛や羽月もいい足をもっている。それを使い切るベンチ采配も欠かせない。
26個に終わった盗塁数も、単に数字だけで語ることはできないけどね。ある程度試合に出て相手投手や捕手のクセ、傾向をつかむ必要がある。
そういう意味でもレギュラーが定まってこないと。成功が重なると周りも続くようになるものだ。
日南キャンプではスタートの切り方など、福地コーチが連日、熱のこもった指導をしている。すっかり影を潜めた機動力野球の復活に期待したいね。