「愛情持って叱る」 カープ新井監督は厳しさ持ち合わせた太陽のようなリーダー
広島の新監督に新井貴浩氏(45)=デイリースポーツ評論家=が就任した。広島を愛し、広島に愛された新井氏の新たな船出。これまで同氏に関わってきた球界OBやデイリースポーツ記者らがその人となりを語り、熱いエールを送る。今回は元カープ担当・杉原史恭記者が担当時代の思い出を明かした。
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「もしもし?今日、無理になった!」。新井さんが現役引退した18年晩秋、指定された喫茶店でインタビューする約束をしていた。「えっ、今どこですか!」。まさかのドタキャンに頭は大混乱。パニック状態で店内に入ると、手をたたいて大笑いする新井さんの姿が…。ドッキリに耐性のないこちらはあぜんとするしかなかった。
太陽のような人だ。その場にいるだけで周りがパッと明るくなる。いじり、いじられ、選手だけでなく、スタッフ、報道陣も含めてみんなから愛される。でも、優しいだけじゃない。2000年代前半の低迷期を経験したからだろう。「カープは家族」という言葉を好み「怒るんじゃない。愛情を持って叱る」と厳しさも持ち合わせるリーダーだった。
忘れられない後ろ姿がある。17年7月7日のヤクルト戦。九回に代打で登場した新井は神宮のバックスクリーンへ、逆転弾を突き刺した。鯉党が「七夕の奇跡」と語り継ぐ一戦の翌日、新井は一塁守備固めで出場している。大量リードの終盤、主力が続々とベンチに下がる中、40歳がグラウンドへ飛び出す姿は異様に映った。胸中は複雑だったかもしれない。後日、話を聞くと珍しく言葉をのみ込んだ。どんな状況でも全力プレーを貫く。個性派ぞろいのチームが束になれたはずだ。
「ユニホームを脱いで2、3年たったら、もしかしたらまた勝負したいって思うかもしれんけど、今は考えられない。4、5年したら分からんけど」。引退直前、現場復帰についてそう語っていた。「ファミリータイム」と表現したこの4年間は満喫することができただろうか。カープは4年連続のBクラス。このタイミングでの監督就任に驚きの反応も少なくないが、みんな大黒柱の帰りを待っていた。広島の街にも再び熱狂が戻るはず。真っ赤なスタジアムの真ん中でうれし涙を流す姿を見てみたい。(17~19年広島担当・杉原史恭)



