古葉監督に感謝 拳制裁より怖い無視無言“鬼の顔”と“仏の顔”北別府氏が追悼

 広島の黄金時代を築いた古葉竹識さんが11月12日に死去した。85歳だった。カープOBでデイリースポーツウェブ評論家の北別府学氏は「勝てない時も我慢して使い続け、育てていただいた。古葉さんが監督でなかったら今の自分はない」と語り、恩人の死を悼んだ。

   ◇  ◇

 古葉さんの訃報に接し、この場を借りて改めてご冥福をお祈り致します。

 私にとって古葉さんは、なくてはならない人だった。ほかの人が監督をしていたら、この成績はなかっただろうし、野球人生そのものが変わっていたかもしれない。

 厳しいプロ野球の世界で、古葉さんは北別府学という投手を育ててくれた恩人です。

 入団1年目から目をかけてくれて、シーズン終盤に経験を積ませてくれた。2勝1敗だったけど、投球回数が29回1/3のところでストップ。翌年の新人王の可能性を残してくれた。

 2年目にはローテーションに入れてもらったが、なかなか勝てず、新人王どころか5勝しかできなかった。

 普通ならローテから外されてもおかしくない。それでも我慢して使い続けてくれた。自信を失っていく私だったが、可能性を感じてくれていたのだろう。私は監督に恵まれたんだなと、つくづく思う。

 コレと見込んだ選手はトコトン起用していた。野手ではその代表格が高橋慶彦さん。エラーしてもエラーしても、絶対にモノにしてやろうという使い方は、投手の私の目にも分かった。

 そしてそれに応えようと猛練習していた高橋選手。チーム内には緊張の中にも、とても良い空気感があった。

 当時、三村さんが二塁へ回り、ショートのポジションが空いていたからね。その代わりに厳しさはハンパではなかった。

 慶彦さんが野手の怒られ役なら、バッテリーの怒られ役は達川さん。他の選手や報道陣の前で、どれほど怒鳴られようが蹴り上げられようが、跳ね返すぐらいの芯の強い選手が怒られ役になっていたね。シュンとなるタイプにはあまり怒らなかった。

 私の場合は怒られると3日ぐらい、話をしてもらえなかったね。早期降板やミスがあった時。無言の叱咤という感じ。これはこれで重圧でした。

 4年目あたりからエース的な扱いになり、そうなると風当たりも厳しくなる。試合終盤に苦しくなり“そろそろ代えてくれ”みたいな態度を見せると、怒られた。そんな顔でベンチを見るな!とね。

 これまた無言の完投指令ですよ。先発投手は4日も5日も間を空けて投げているんだから最後まで投げろと。“完投精神”ですよね。それからは、その完投が目標になった。

 古葉さんと言えば鉄拳制裁が有名だよね。今では御法度だけど。でも、やるべきことをやっていれば、仏様のような人だった。それをやらないからカミナリとパンチが来る。(笑い)

 だから、選手自身も自分が悪いと自覚していた。そこで一発、気合いが入る。アントニオ猪木さんと一緒かな。

 一流の選手に育てるという気持ちがあるから厳しくなる。それをみんな理解していたから、ついて行ったんだと思う。

 ただし、投手にカミナリが落ちることは少なくて、投手の分まで割を食うのはいつも捕手。もちろん投手にそれが聞こえているから余計、心に響くわけですよ。

 広島野球という言葉をよく耳にすると思いますが、それは足と小技で走者を進める緻密で嫌らしい野球のこと。古葉野球そのものです。

 前述したようにピリピリとした緊張感の中で鍛えられたチームは必然的に強くなりますよ。そこで広島野球と呼ばれる言葉が作られていったのだと思う。

 ここ数年、私の病気やコロナの関係で、直接お会いすることは叶わなかったが、2012年の1月に開かれた野球殿堂入りパーティーでは、私や津田恒美さんを祝うため、わざわざ駆けつけてくださった。本当に恐縮したものです。

 3年前に衣笠さん。そして古葉さん。強いカープの象徴だった人たちがいなくなっていく。寂しくなるばかりです。

       合掌

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