碧のにおい さそわれふらり 梅のまち~和歌山・みなべ

 春うらら…「南部梅林」はいい香りが漂う
 付近で一番古いという石組みの梅林
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 もうすぐ3月だ。ようやく春の気配がしてきたので梅を見に和歌山県のみなべ(南部)に行った。みなべといえば梅、と連想するほど梅のイメージが強い同地は「みなべ・田辺の梅システム」が世界農業遺産に認定されているほど。地元の思い入れも強く、梅条例までできてしまった。「おにぎりには必ず梅を入れましょう」というもので、そこまでやるかとツッコミたくなる。そうは言っても“梅のまち”はいい香りだった。

 ◇   ◇

 関西に長く住んでいる人なら「みなべ(南部)」と聞いただけで唾液がじんわり出るほど梅を連想するのではないだろうか。みなべといえば梅。梅といえばみなべ。

 しかし、そもそもなぜ同地で梅ができるようになったのか。ボランティアガイドの坂本恭子さん(60)が解説してくれた。江戸時代にさかのぼる。

 周辺の土地は斜面が多く、しかもやせており、米栽培には適していなかった。年貢を納めることも難しい。そこで当時の藩主が、梅はやせた土地でも育つとの理由で領民に梅栽培をすすめ、徐々に広まっていった。

 時代は進んで19世紀末。みなべに生まれた内中源蔵という人物が1895(明治28)年ごろから梅栽培の将来性に目を付けた。開墾して梅を植えて4ヘクタールに広げ、周囲にもすすめた。日露戦争の際には戦地に赴く兵士のために「日の丸弁当」が作られるようになり、「梅特需」が生まれた。これを機に梅農家が爆発的に増え、現在に至るという。

 最も古い梅林はおよそ350年くらい前のもので、土台は石組みになっていた。ほかの梅林と違った趣がある。ちょっと高級そう。場所は晩稲(おしね)地区の清水谷付近。散策ができる梅林「日本一の梅の里 南部梅林」では散歩コースがA、B2種類あり、Aコースだと石組みの梅林を見ることができる。

 梅林は斜面が多く、青いネットが木に沿って斜面の下の方に伸びていた。梅は完熟すると自然と木から落ちるそうで、ころがった実がネットに引っかかって収穫するという仕組みだ。一見、簡単なようだが坂本さんは「命がけなんです」と訴えた。マムシが潜んでいることもあるそうで、収穫時には細心の注意が必要だという。

 坂本さんは、みなべの梅として有名な「南高梅」をあげ、「一つが高いと言われますけど、そう思ってどうか納得していただければ」と笑った。

 梅の花はだいたい2月中旬ごろから咲き、3月初旬までは梅林のどこかで見ることができるという。寒い冬よ、さようなら。

 ◆アクセス JR新大阪駅から特急「くろしお」に乗ってJR南部駅まで約2時間10分(乗車券片道3020円、特急料金同1730円)。※南部駅に停車しない特急もあるので要注意。

 ◆世界農業遺産 農業の大規模化、品種改良、肥料の大量使用などの近代化で失われつつある世界各地の伝統的な農業、農村の文化や景観、生物多様性に富む生態系を次世代へ保全・継承することを目的として、2002年から国連食糧農業機関(FAO)が始めた認定制度。持続可能な農業を実践する世界的に重要な地域として、マサイの牧畜など、アフリカ、南アメリカ、アジアの15カ国、36地域が認定されている。日本では「みなべ・田辺の梅システム」など8地域。

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