「深夜食堂」のように~大阪・藤井寺

 にぎやかな「あうん」。中央のエプロン姿が岩塚淳子さん。奧の花はお客さんへの「感謝の気持ち」
 「あうん」の外観
2枚

 大阪・藤井寺市の旬菜酒家「あうん」は、季節の野菜中心の手料理が人気だ。女将の岩塚淳子(あつこ)さん(57)は夫の突然死を乗り越え、今年、開店10年の節目を迎えた。「支えてくれた人たちにひたすら感謝」と振り返り、「将来は『深夜食堂』のような店に」と夢を描く。

 ◇   ◇

 「あうん」は2006年3月に開店した。その2年前、夫がサウナで倒れ急死した。まだ45歳だった。

 岩塚さんは「いきなり警察から遺体確認を、と電話があって。足がガクガク震えました」と振り返った。2人の子どもは大学生と高校生だった。これからどうやって生きていこうか。折れそうな心を支えてくれたのは、小中学校時代を過ごした地元・藤井寺の同級生たちだった。

 もともと料理は得意。「店で食べるよりおいしいから」と夫はお酒を飲むとき友人を家に呼び、十数人になることもあったという。「だから何か仕事をしなくては、と思ったとき居酒屋をやろうと。同級生が物件を見つけてくれ、無事に店がスタートしてからも『常連さんがつくまでは俺らが食べにくるから』と、毎日誰かが交代で来てくれたんよ」。

 大鉢には季節の国産野菜を使った“選べる付き出し”が並ぶ。取材に訪れた日はエンドウ豆の卵とじ、きのこのクリーム煮、小松菜の煮びたし、すじコン、煮込みハンバーグなど。どれもおいしそう。

 カウンターとテーブル席が2つ。ガラガラッと扉が開きお客さんが「ただいまぁ」と入ってくる。岩塚さんは「お疲れさまでーす」と迎える。週末には必ず来るという会社員の真銅守さん(40)、鳥羽高彦さん(43)、公務員の辻村隆行さん(41)は「妙に落ち着く」「ママの気配りが感じられる」と魅力を語ってくれた。

 「昔から冷蔵庫にあるものでパパッと料理するのが得意やったね。お客さんのリクエストがあればできるものは作る。チェーン店にはない良さといえるかな」。この先は「深夜食堂」のようになれたら、とひそかに思っているという。

 客が頼めばたいていの料理を作ってくれる無口なマスターが主人公の漫画でドラマにも映画にもなった。“ちょっとおしゃべりな女将版”といったところか。自身のつらい経験も接客の役に立つのだろう。小腹も心も満たす、リアル深夜食堂の誕生は近いかもしれない。

 ◆アクセスなど 藤井寺市藤井寺1の2の12 近鉄藤井寺駅から徒歩3分。TEL072・944・1112。営業19時半~深夜3時ぐらいまで。月曜定休。

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