未来が過去を輝かせる

 【5月22日】

 朝から日経新聞を読んで泣きそうになった。日経平均株価が一時反発したからではない。原油輸入単価の急上昇は確かに悲しいニュースだが、ホロッときたのは「カズの語り」である。

 三浦知良が同紙に寄せるコラム「サッカー人として」でこんなふうに綴っていた。

 【過去で未来は決まる。でも未来を充実できたら、悲しい過去も良く思えてくるんじゃないか。未来が過去を輝かせてくれるのでは-】

 来月開幕するサッカーW杯北中米大会における「選外」選手について思うところ、また、選出されたメンバーでも「出ない選手」の心持ち、行動について自らの視点を書いている。

 メンバーに選ばれない、試合に出られない理由は「戦術的理由」「故障」など様々だが、カズは【出番を失ってにこやかなプロなどいない】としながら、当該選手の言動、覚悟が組織に及ぼす影響は「大きい」という。

 これを読んで思い浮かぶ選手が阪神にもいる。未来が充実すればつらい過去も良く思える…高橋遥人もそうだ。

 左肘のクリーニング手術、トミー・ジョン手術…など、4年間で5度の手術を経験した遥人だけど、僕が彼を尊敬するのは表舞台に帰ってくるまでの振る舞いである。取材の限り、遥人は出番を失っている間も周囲に「気遣わせるような空気」をつくらなかった。グラウンドやブルペン、球団施設において…。いや、それだけじゃない。僕なんて私的に話したことがない関係性だけど、遥人はどこで会っても必ず、曇りなく挨拶してくれた。必ず、だ。

 リハビリ中はカムバックできる保障などない。再発の怖さはもちろん、復帰できても「勝てる投球」を取り戻せるかどうか判らない。そんな不安定なメンタルを携えながらチームの一員として前向きに「戦い」続ける姿勢、振る舞いが未来の活躍に繋がり、それら全てがつらかった過去を照らすのだ。

 そして…なんちゅうルーキーだ。この夜「伝統の一戦」に初出場し、1番打者として初の長打、猛打賞、初打点を挙げた立石正広である。3本のヒットで個人的に好きだったのは、初球のスライダーをセンターへ運んだ2本目だ。まっすぐのタイミングで待ちながら、変化球がちょっと抜けたとみればバットが出る。ヒットゾーンへ飛ばす。それも初球を…。ただ者じゃない。

 思い返せば、1月に右脚肉離れ、3月に左手首の関節炎、4月にハムストリングスの筋損傷を発症するなど入団後3度の離脱を経験しながら、思考が常に建設的で、周囲への適応、連覇を狙うチームへの帰属意識が抜群だったと聞く。リハビリのつらい時期でも、概ね先輩からは「かわいいヤツ」。そんな評価を得る大物…プレー以外のところでもやはり逸材だと思う。

 【きょう、あす次第で過去は変えられる。だから1センチでも前へ進む】

 28年前のW杯で選外になったカズだから、コラムで綴った言葉が染みる。

 しんどかった過去を輝かせる遥人や立石の未来の躍動、振る舞いがこれからも楽しみになる。=敬称略=

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