新井が語るダルの覚醒前

 【5月21日】

 日米通算200勝を達成したダルビッシュ有が歓喜のインタビューで新井貴浩の名前を挙げていた。忘れられない1勝を問われた右腕は「それは覚えています」と、19年前を懐かしんだ。

 「新井さんに右中間にすごいホームランを打たれて、野村謙二郎さんにも打たれたというのもありますし、それがやっぱり一番印象深いですかね」

 2005年6月15日、日本ハム時代のダルビッシュが交流戦の広島戦で高卒ルーキー初登板初勝利を飾った。松坂大輔以来の快挙だったが、しかし、

完封直前の九回に連続被弾。その日のインタビューで希代の18歳は「一番うれしい勝利でもあり、一番悔しい勝利でもあります」と話していた。

 マツダスタジアムの首位攻防戦前にカープ監督の新井貴浩と話す機会があったので、そんな話をぶつけてみた。

 「ダルビッシュが僕の名前を??それはうれしいですね」

 あの試合の記憶ははっきりと?

 「覚えてますよ。彼がルーキーのときでしたよね。プロ初先発だったのかな。札幌ドームの右中間へね…。高めに抜けてきたスライダーを…。でも、あれ、彼の覚醒前でしたから」

 マツダスタジアムの西日を浴びながら、背番号25は笑って謙遜した。

 「九回まで完封されてたんですけど僕が完封を阻止するホームランを打ったんですよ。彼の覚醒前ですけど…」

 重ねて謙遜した新井だけど、ダルビッシュは高卒2年目に早くも2ケタ勝利に到達し、3年目にパ・リーグMVPを受賞。当時からえげつないスライダーを投げていた記憶がある。

 「いや、もちろんあの頃からすごいピッチャーでしたよ。あの試合も(ベンチで)『速いボール投げるよな…』と言ってて、全然打てなくて…」

 試合前そんな話で盛り上がったCT第1ラウンドは、村上頌樹と床田寛樹の両先発でプレーボール。セ・リーグ防御率トップ2の投げ合いだから終盤までスコアボードに「0」が並ぶ投手戦が予想されたが、村上が序盤からカープ打線につかまり5失点。こちらの想定が外れる展開になった。

 昨季セ・リーグMVPに輝いた村上は今季この試合まで7試合に先発し、防御率1・30と踏ん張ってきた。

 「相手がまだ何をしてくるかも分からないのに、昨年良かったものを変えてやることもないと思いますので…」

 今春キャンプ中、村上に「2年目のジンクス」の話を問えばそんなふうに話していた。その通りだと感じたけれど、他球団との対戦が一巡、二巡すれば、方略の鋭利な眼光も伝わるかもしれない。そこをまた上回る力が求められるわけだが、僕が村上を応援したくなるのはMVPを獲ってもまるで「奢り」がないところ。振る舞いも練習姿勢も変わらず謙虚なところである。

 そういえば、ダルビッシュは偉業達成の会見でこうも言っていた。

 「自分にできることは謙虚に明日からまたやっていくことなので、今日のことは今日で忘れたいと思います」 

 悔しい負けを経験した男の「明日」に注目したい。=敬称略=

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