岡田彰布の「阪神愛」

 【10月26日】

 バッティングには理想の構えがある。下半身のそれは、岡田彰布いわく「立ちションする格好」だそうだ。それが「一番ラクなところ」であり、「力が一番抜ける」理にかなったフォームだと説く。

 「立ちションいうても、今の若い子なんかそんなん知らんやろ。立ちションしたらアカンもんな」

 秋季練習で若手を指導した岡田は、そう言って笑った。

 場合によっては軽犯罪法違反に問われる…なんてことは置いておいて、確かに、最近の若者の口から「立ちション」なんて聞かなくなったような。

 そんなこんなの「岡田語録」を選手はどう読むだろうか。優勝を「アレ」という監督に会うのは、きっと初めてだろう。

 これは想像だけど、「岡田新監督決定」という報道が出たとき、「マジか…」と、身構えた選手は多かったのではないか。検索すれば、何でもネガティブな情報があふれる時代である。岡田も例外ではないし、受け取りようによっては、対面前から過剰反応…なんてこともきっとある。

 でも、どうだろう。新体制で始動して1週間も経っていないけれど、「アレ」や「立ちション」など、ちょっと突き抜けてる感が、意外と(と書けば怒られるか)、今の若い選手に受け入れられているのでは?

 プロ野球の監督に「人望」は必要か?これを主題に前々回から長々と書いている。

 最近の若者は、いろんな手段、あらゆる所から多様な価値観を得ることができる。SNS等で会社の上司よりリスペクトできる偉大な人と繋がったりもするので「なぜ、あなた(上司)に偉そうに言われなきゃいけないの?」という感覚になる-もしそうだとすれば球界ではイチロー監督や大谷翔平監督のレベルでなければ若い選手はついてこないのか。

 いや、若い世代にはまるで情がないみたいな書き方は正しくないと取材経験上、感じている。

 岡田の「人望」で思い出す話がある。

 ホークスと戦った03年の日本シリーズで、星野阪神の三塁コーチを担った岡田は、第3戦の勝利で目を真っ赤に腫らしていた。福岡で連敗し、迎えた甲子園での初戦は、藤本敦士のサヨナラ犠飛で決着。そして翌日の第4戦、金本知憲のサヨナラ弾で対戦成績を2対2に。雄叫びをあげベースをまわる鉄人は、三塁コーチの岡田へガッツポーズを向けた。

 「藤本のサヨナラのとき岡田さん泣いとったんよ。この人、ほんまにタイガースのこと好きなんやなって思ってな。あのとき、星野さんが辞めて次の年から岡田さんが監督になることが決まってたよな。前任監督が日本一になったら自分が監督やるときにキツいって考える人もいる。けど、岡田さんは純粋に勝ちたいと思ってたんだろうな。だから、俺は岡田さんへ向けてガッツポーズしたんよ。喜んで欲しかったしな」

 十数年前、金本からそんな話を聞いた。続きは次回。=敬称略=

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