2010年のダルビッシュ
【11月26日】
ソフトバンク4連覇から一夜明け、プロ野球評論家の皆さんが、ソフトバンクと巨人の差を様々な視点で語っている。どれも「なるほど」と唸るわけだけど、メジャーリーガーの視点もおもしろい。
「ソフトバンクはチームでこの道と似た道を通っています。才能ある選手も多いけど、とにかくフィジカル差は感じます。試合見たら感じると思いますが、フィジカルが一定のレベルを超えると技術では抑えきれなくなります。じゃあどうするか?と考えたのが2010年でした」
20年のメジャー最多勝投手、ダルビッシュ有のツイートである。彼の「言葉」はいつもストレートで好きなので、フォローさせてもらっているのだけど、今回の日本シリーズについても、彼一流の視点で呟(つぶや)いていた。
ソフトバンクと巨人の差…その一つはフィジカルにあり、と。確かに、見る者すべてが圧倒的なパワーの差を感じたはず。
どの投手が出てきても速球の質が、どの野手が出てきてもスイングスピードが、脚力が、巨人のそれを上回っていたように映った。
ダルビッシュのいう「この道」とは、ウエートトレーニングであり、彼が「じゃあどうするか?」を考えた2010年の件を、実は少しだけ知っている。
あれは10年1月。まだ虎番だった僕はあるスクープを取った。
それは、当時日本ハムのダルビッシュと阪神の金本知憲が合同自主トレを行う-というもの。
41歳と23歳。打者と野手。セとパ。これまで接点のなかった、歳の差スターの「合体」が取材で明らかになったわけだけど、このハナシが10年後に繋がるとは…。
ダルビッシュは10年から本格的にウエートトレーニングを取り入れ、世界と戦う準備を始めたわけだけど、わざわざ札幌から金本の練習拠点、広島まで日帰りで足を運ぶのだから、「学び」の貪欲さはハンパない。トレーニングジム「アスリート」で4時間超。若き日本のエースは鉄人のトレーニングに目を凝らし、質問魔になり、「チーム(日本ハム)に持ち帰りたい」と言って広島を後にした。
「ほぼ逆風でしたが、自分が世界と戦うためにどうしても必要だと確信していたので続けてきてよかったです」。これも、この度のダルビッシュのツイートである。
フィジカルが一定のレベルを超えると技術では抑えきれなくなる-前述した彼の呟きを読めば、八重山の爽やかな風を思い出す。
今春2月、千葉ロッテの石垣島キャンプへお邪魔し、今岡2軍監督と2時間、いやもっとかな…野球談議させてもらった。
「ホークスは工藤さんが(ウエート)トレーニングをチームとして徹底させているようですね。ウチも数値を管理して、チームとしてしっかりトレーニングをやっています。金本監督のやり方をパクらせてもらって…(笑)」
今岡ははっきりそう言った。
巨人を圧倒したソフトバンクに今年唯一勝ち越した球団は、ロッテ。この続きは次回。=敬称略=