当欄が選ぶ「MVP」

 【11月18日】

 毎年レギュラーシーズンが終われば、重大な任務が待っている。セ・パ両リーグのMVP、ベストナイン、新人王を決定する記者投票がそれだけど、割とすんなり書ける年と、悩ましい年がある。

 長年の担当球団をひいき目に…なんて思われがちだけど、そこはクールにいきますよ、もちろん。

 投票結果を楽しみに待つ、その一方で、異例尽くしのシーズンになっただけに、個人的には「特別枠」「番外編」の投票があってもいいのかななんて考えてみたり。

 というのも、この日の取材で、誇らしい話を耳にしたからだ。

 3日前(16日)に開かれた新型コロナウイルス対策連絡会議及び臨時12球団代表者会議に於いて、コロナ禍の感染対策として「模範的な応援スタイル」だったと、阪神タイガース応援団の「関東若虎会」が、巨人軍の総務本部長から称えられたというのだ。

 東京ドームにおけるビジター応援団の中で「最も統制のとれた安全な応援」「手拍子だけ、発声無しの応援を徹底しておられて模範的」だった、と。

 同会議では、横浜スタジアムと東京ドームで観客動員制限50%を超えて行った技術実証のデータを共有したというが、最も感染リスクが伴うのは、大発声、大歓声が集中する外野席であり、そういう意味でも「応援のあり方」が注目されたシーズンでもあった。

 「かっとば~せ~」の大音量に背中を押される選手たち。そんな日本の野球文化に欠かせない応援にあらためて注目し、これまでのスタイルが制限される中で応援団がどんな変化を求められるのか。ずっと気になっていたので、ライバル球団からの称賛を誇らしく感じる阪神関係者も多いと聞いて、何だかほっこりしたり…。

 「この特別な年にプロ野球の目指すところは、お客さんとともに今シーズンを無事に終えることなんだろう、と。NPBのお考え、球団のお考えを聞いたときに、ただならぬ決意を感じましたし、そんな中で我々がすべきことは何かを考え、声を出す以外の方法で、今までと180度違うやり方を考えなければいけない。まずはコロナ禍を乗り越えようと、今できる応援の方法を考えました」

 阪神タイガース応援団コンプライアンス統括長に連絡してみるとそんなふうに語ってくれた。

 まさかの「無観客」で開幕したプロ野球が観客を迎え入れたときの感動は、選手にとって、ファンにとって、言葉にならない特別なもの。涙する人も沢山見掛けた。

 応援団はこれまでの「かっとばせ」のボードをこんな言葉に代えファンの心をひとつにしたのだ。

 「声援は心の中で!」

 「思いを手拍子にのせて!」

 前述のコンプライアンス統括長は言う。

 「我々だけじゃありません。全ての球団の応援団がしっかり(感染対策)されていたと思いますし同じ決意でやられたと思います」

 20年プロ野球のMVPは、阪神の…いや、12球団の応援団、そしてファンの手に。=敬称略=

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