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諦めずもがいている

 【10月28日】

 甲子園のバックネット裏に背番号00のレプリカユニホームを掲げるファンがいた。朝日放送の中継映像にずっと映っていたが、なぜ一軍不在の選手を??そう感じる視聴者も多かったのではないか。

 そのファンがどんな意図で掲げていたのか分からないけれど、僕はノスタルジックにあのユニホームを眺めていたわけで…。

 本紙が1面で報じているようにこの日(28日)阪神は兵庫県内で上本博紀に来季構想外の旨を伝えた。球団は何らかのポジションを用意すると見られるが、上本は現役にこだわる。つまり、阪神のユニホームでプレーするのは今季限りであり、今後、他球団で生きる道を模索することになるのだ。

 プロ12年目で訪れた野球人生の転機である。

 上本はもう阪神の戦力にならないのか。

 実は夏場の彼を見ながら、これは来シーズン楽しみだなと僕は思っていた。8月はウエスタン・リーグで14打数7安打(打率・500)、1軍でも17打数6安打(打率・353)を残し、今月もファームで2本塁打するなど、34歳になった今もらしさは健在。だから個人的な思い、書きたいことは山ほどある。が、このスペースでは足りないし、書けばどこぞにカドが立ちそうなので控えておく。

 とくに隠し立てするつもりもないし、これまで当欄で何度か書いてきたことだけど、僕は上本という野球人を阪神というチームの中で最もリスペクトしてきた。なぜって、彼の能力はプロ野球という超人集団に於いても抜けていると思うし、フォア・ザ・チームの精神も随一だと感じるから。

 ただ、阪神に於いて構想外と判断された以上、現役にこだわるならば退団…この世界はそういうものであり、だからああだこうだ、ウジウジいうものでもないけれど僕の取材を書けばこうだ。

 上本の現在地は、阪神の構想外かもしれないが、プロ野球の戦力外ではない。だから、彼が望むならば、納得するまで、燃え尽きるまで…そんな思いで応援したい。

 キャプテンを担った早大時代、上本はリーグ戦全試合フルイニング出場を果たした。ケガだろうが何だろうが貫いてきた強い責任感はプロでも変わらなかった。

 広陵の先輩でもある金本知憲は監督時代こう語っていた。

 「うえぽんは物静かに見えるけど、内面の負けん気は凄いぞ」

 鉄人が、そう言うのだ。ほんの少し上本を知る者として頷く。

 コロナ禍の今年は叶わなかったけれど、昨年は関東某所で上本とテーブルを囲んだ。あの夜、今後の野球人生について思いの丈を語ってくれた。その中身は上本がプロ野球界を退くときまで取って置くとして、いま、彼の感情を想像して書くとすればどうか。

 上本は今季自身のテーマ曲に僕の大好きなアーティストMrs.GREEN APPLEの『僕のこと』を選んだ。

 「幸せと思える今日も 夢敗れ挫ける今日も ああ 諦めずもがいている」-。=敬称略=

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