もとふ。露やきゃ雨

 【10月19日】

 新井貴浩がツイッター(Twitter)を始めた。これまで頑なにガラケーを貫き、球界で最もSNSと縁遠かった男がそんなハイカラな…と思っていたら、即トレンド入り。注目の初投稿は…。

 「新井貴浩です。もとふ。露やきゃ雨選手です。今は、モデルと俳優やってます」-。

 もちろんちょっとしたお遊び。なんだけど、iPhoneをいじったことがなかった彼だから、スマホの文字変換の拙さはガチ。ただそれも「新井さんらしくていいじゃん?」ってなノリで「もとふ。露…」のままゴーしたわけだ。

 阪神の…というよりも新井はやっぱり広島カープのOB。緒方カープを連覇へ導いた晩年の活躍もあって、そんな印象が強いという方も沢山いると思う。もっと時が経てば、タイガース新井の印象がどんどん薄れるかもしれないのでこのあたりで僕の回想をひとつ。

 新井が阪神に自由契約を申し入れ、退団した14年秋のこと。ロッカーを整理した後、彼が最後に球団事務所を訪れた日があった。

 スーツ姿で球団職員、トレーナー、裏方さんそれぞれのもとへ、「フィナンシェ」の詰め合わせを届け、甲子園を後にした新井の姿を阪神の職員はよく覚えている。

 「熨斗(のし)紙に達筆で『感謝』の文字と手紙がありました。最後まで丁寧な方でしたね」

 6年前の秋、阪神球団から事実上〈戦力外〉の大幅ダウンを掲示されたわけだが、新井の口から恨み節を聞いたことがない。どころか、彼は今も阪神への「感謝」を忘れていない。熨斗にしたためた言葉は彼の本心…そんな新井を思いながら、何を書きたいか。

 取材で阪神に携わって20年ほどになるけれど、この球団のOBには〈現役〉の足を引っ張り、晩節を汚す人が一部いらっしゃることが残念。辛辣な助言に愛情が備わるOBがいる一方で、自己顕示欲か優越思想か知らないが後進の綻びをメディアに売ってほくそ笑む…そんなさみしい人達がいる。

 阪神にとって鬱陶しい筆の自負?がある。が、コロナ禍における球団の進む方向性は、一部OBが揶揄するような腐敗したものでないことだけは記しておきたい。

 鉄の校則で縛る学校の生徒は立派に育ち、校則の緩やかな自由な校風の生徒が道を踏み外すのか。違うはず…例えが的確かどうか自信はないけれど、取材の限り、今の阪神球団はそんな理念のもと運営され、矢野燿大が掲げる「自主性」もそんな風土に基づく。

 もちろん、ミスも出る。

 職員も選手も皆、人間だから。

 人道的に許されない罪は裁かれるべきだけど、今回のミスはそうじゃないと僕は思っている…それよりも、闇が深いのは、再三書くけれど、球団の「内・外」で足を引っ張る内通者の存在である。

 新井が後進の足を引っ張ることはないし、まして愚劣に加担することもない。穏やかに見守る。

 そういえば、我が家近くを散歩していると、阪神球団の良心…そういえる元球団社長のお姿を見掛ける。続きは次回。=敬称略=

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