サリン事件から25年…

 【3月20日】

 オウム真理教による無差別テロ「地下鉄サリン事件」から25年になる。1995年3月20日。当時大学4年だった僕はTVニュースにくぎ付けになった。阪神・淡路大震災から2カ月……放心した。

 千代田線、丸ノ内線、日比谷線…。事件が起きた午前8時ごろは通勤ラッシュの時間帯で、地下鉄の駅周辺は助けを求める乗客で溢れていた。凄惨な現場をリアルタイムで報じる映像を見ながら、このカメラを回す報道マンもきっと身が危ういはず…そんなことを思い、こわくなった記憶がある。

 デイリースポーツへの就職が内定し、入社式を待つ身だった。大変な年に新聞社へ入るんだな…大学の卒業式で学友からそんなふうに言われたが、〈その通り〉だった。オウム幹部・村井秀夫の刺殺事件を取材したのは、入社間もない4月。神戸に復興の光がまだまだ見えないなかで、何が何だか分からないまま現場と会社を往来。エラい世界へ飛び込んでしまった…毎夜、そんな思いだった。

 大変な年に我が新聞社へ入る。今年の新人もそうだと思う。先の見えないコロナ禍によってスポーツ界も先がかすんでいるけれど、この日の神戸新聞1面は「大阪との往来自粛要請」の大見出し。兵庫、大阪で感染者が増えている状況を加味し、両府県は20日から当面の間、兵庫-大阪間の不要不急の往来を自粛するようにと「前代未聞の要請」を報じている。

 西宮で暮らす選手は北新地へ飲みに行けないの??「不要不急」の認識はそれぞれだけど、事態がそこまで深刻化するなんて…。

 しばし往来できなかった千代田線の明治神宮前駅…95年3月20日は、どんな景色だったのか。

 ヤクルトと阪神が開幕戦を戦うはずだった神宮が無観客。この日の景色もまた非常事態に映る。

 3点ビハインドで迎えた最終回の守り…公式戦ではあり得ないシチュエーションで、ミスが失点を呼んだ阪神である。昨季102失策から挽回を目指すシーズンだけど、誤解をおそれず書けば、反省は必要だけど、気にしすぎるな…と言いたい。だって、僕がこの世界に入った25年前、セ・リーグを制したヤクルトの失策数は(少ない順で)リーグ4位だったし、パ・リーグを制したオリックスの失策数はリーグワーストだった。

 あの年〈日本一に輝いた〉野村ヤクルトの新人に「守備職人」宮本慎也がいた。国難ニッポンを生き抜いた彼らの世代は逞しかった…僕の目にはそう映っている。

 「宮本さんは自分の言葉に責任を持っている人。厳しい言葉を発することもありましたけど、あれは自分へのプレッシャーだと思います。守備から入っていった(レギュラーを掴んだ)人ですし、並みはずれた努力をされたと思う」

 阪神内野守備走塁コーチ藤本敦士からそんな話を聞いた。秋、春のキャンプでノックを打ちまくり手に血豆がにじむ藤本はきっと信じている。努力は報われる。挽回の光は見えている、と。それにしても、プロ野球の開幕が待ち遠しい3月20日である。=敬称略=

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