背骨再生は難しいけれど…

 【3月7日】

 「あれ、もしかして、ウンギョンじゃない?」。以前USJへ行ったときのことだ。エントランスで周囲がわさわさしているので見ると、どこかオリエンタルな雰囲気の女性が連れと談笑している。

 韓国の女優さんなんや。知らんなぁ…なんて会話して素通りしたのだけど、あの彼女が日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いたシム・ウンギョンとは、驚いた。

 6日、藤井道人監督の映画『新聞記者』で栄誉を手にしたウンギョンが報道記者の役作りについて発したコメントが印象的だった。

 「撮影前に新聞社を見学させてもらったんですけど、記者さんが背中を丸めて仕事する姿を見て、参考にさせてもらいました」

 新聞記者=猫背。その通りである。ウンギョンの演技をこれから拝見しようと思っているが、どれ程のリアリティーか楽しみだ。

 「これは首からくる痛みです。ヘルニアの兆候があるので、まず普段の姿勢を正してください」

 こちらのコメントは当方が通う西宮の接骨院のセンセイのもの。膝が悪い母親の付き添いで、ついでに自分の肩痛を診てもらうと、レントゲンで頚椎の異常が発覚。なかなか元には戻らないそうで厄介なんだけど、まぁ、自分が好きで選んだ職の病だからしゃあないと割り切る。日本アカデミー賞の壇上でスッと背筋の伸びたウンギョンの晴れ姿を眺めながら、そんなことを思ったり…。

 元に戻らないから、しゃあないと割り切れないのがプロ野球の世界である。この日、甲子園の日本ハム戦でルーキー井上広大と遠藤成が1軍の舞台を踏んだ。彼らの将来はとても楽しみだけど、その裏返しで気になる選手がいる。

 「戻ってほしい」と、再生を期待するのは、中谷将大。この日、無安打で、依然オープン戦でヒットが出ていない。井上ら「新人の外野手」が頭角をあらわせば、いわずもがな、中谷の出番は減っていく。捕手としてドラフト指名され、はや10年。外野手に転向後、17年に20本塁打したまでは良かったが、18年は5本、昨季は6本。27歳の大砲が再生されれば、虎の外野陣は他球団が羨む層になる。

 阪神のヘッドコーチ清水雅治に中谷の件とはいわず「再生」のハナシを聞いてみた。試合前、日本ハム中田翔が清水に挨拶する姿を見て思った。西武や日本ハム、ロッテなど複数球団で指導した清水だから好例を知るはずだ、と。

 「再生というか、きっかけをつかんで成功した選手で思い出すのはG・G(佐藤)かな。彼は最初捕手で入って、内野をやったりしたんだけどダメで…。『外野をやらせてみてください』と、俺から伊東(勤)監督にお願いしてね」

 新人時代の04年から3年連続で5本塁打未満だった佐藤が、07年から3年連続20本塁打超え。数百万だった給料は億を突破した。当時西武コーチだった清水は謙遜するが、恩人であることは確かだ。

 「野村さんの再生工場じゃないけど、何かきっかけでね」と清水は懐かしむ。捕手から外野手か…中谷再生を願う春だ。=敬称略=

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