特別扱いはありません

 【12月2日】

 グランドプリンスホテル高輪の中庭で千葉ロッテ広報メディア室長の梶原紀章と会った。彼はスマホを見つめながら何やら思い耽っていた。日本、いや、世界が注目する18歳を預かることになり…。

 「彼と約束したんですよ。互いに本音でいこう、と」

 梶原がいう「彼」とは、佐々木朗希である。大谷翔平を凌ごうかという異才と初めて膝を突き合わせたのは入団交渉時の控室。じっくりと30分間、プロ野球選手が発信する意義と責任について、梶原は広報リーダーとしての見解を忌憚なく佐々木に伝えたという。

 ルーキーの枠に収まらない、野球界の御宝である。快活を地でいく梶原だけど、佐々木との交渉前夜はなかなか寝付けなかったそうだ。本人と向き合い、何から話そうか、どう伝えようか。ドラフト後、佐々木を知る努力を怠らなかったつもりだけど、百戦錬磨の名物広報もさすがに構えていた。

 高校時代の佐々木といえば、肉声が世間に届きにくい環境に置かれていた気がする。彼の取材経験がない当方の勝手なイメージだけど、周囲が必要以上に神経をとがらせ、かえって本人は息がしづらかったのでは…。

 「本人に聞けば、会見で話をすることが苦手だとか嫌だとかいう思いはないようです。今回の交渉会見では、テレビ会見、代表インタビュー、記者囲み…すべてやって、これからはこんな感じだよ、と。専属広報?ウチの球団には、そういうスタンスはありません。特別扱いという方法がいい方向にいくとは思いませんので…。取材対応は去年の藤原(恭大)らが良いお手本になると思っています。佐々木には『9日(CSで生中継されるロッテ新入団会見)も頼むね』とメールしておきましたよ」

 生中継はされなかったけれど、我らが阪神タイガースの新入団会見もこの日、無事、開催された。

 「無事」と書いたのは、個人的に案じていた新人がいるからだ。

 今夏は佐々木以上に脚光を浴びた18歳、阪神ドラフト2位の井上広大である。井上は先月、大阪府内の駅階段で人にぶつかられ、右足首を捻挫…松葉杖での生活を余儀なくされた。聞けば「事故」に遭った19日は雨模様で練習が中止となり、帰宅時間がラッシュアワーに重なったという。 

 「あれは不運でしたからね…」

 井上の担当スカウト・渡辺亮はそう語る。甲子園を制した履正社の主砲は現在体重99キロ。オーバー気味に映るが、足首の状態も良好で、今週からプールトレーニングを開始するそうだ。渡辺は言う。

 「きょうの会見、どうでした?きちんと話せていたでしょ?一見おとなしそうですけど、練習中も人一倍、声の出る選手ですし、考え方もしっかりしています」

 不本意な報道が世に出た井上だけど、それだけに、ファン、世間は彼のこれからに注目している。

 「選手教育は3年目までが勝負だと思っています」

 そう話す阪神球団広報課長の新田慎也にとっても、使命を新たにした日である。=敬称略=

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