試合に出ないのも勉強?
【8月9日】
あれ??きょうは出ないのか?京セラドームに集った観客は、カープファンも、阪神ファンも、そう思ったに違いない。小園海斗である。いや、実は当方も思った。スタメン落ちは残念だなぁ、と。
カープのショートは三好匠。下水流昂との交換トレードで楽天からやってきた内野手がスタメンだった。前回対戦で小園が封じられた高橋遥人が先発だったからか。でも、ここは関西。小園見たさのファンにとっては、やはり「初めから出してくれよ~」になる。
「どうでした?あいつのバッティング。スゴくないです?めちゃめちゃ飛ばすでしょ?」
東出輝裕が僕の背を叩き、胸を張る。試合前の練習が終わった京セラドームの三塁ベンチ裏。旧知のカープ打撃コーチとは、昔からざっくばらんに話をするけれど、彼がこれほど褒めるのは珍しい。
最近のカープ戦は〈小園鑑賞〉が楽しみでもある。だから、試合に出ないかも…となれば、練習を見るしかない。確かに、打撃練習はスゴかった。ベンチスタートの彼は最終組でフリー打撃をやったので、カープより早く練習を終えた阪神の選手もベンチに勢揃い。19歳の非凡な軌道を眺めていた。
小園が放り込んだ最上段のあそこって、何階席になるんだっけ?
「あれは5階席だと思います。ヤバいっすね…」。若い虎番とともに、「ほぉ~」「うぉ~」と、まるで盆の花火大会でも眺めるように、打つ度に感嘆詞を並べた。
「ん~、一番か…。まったく物怖じしないところですかね。ホント、堂々としてますから」
小園って何が一番スゴいの??カープ守備走塁コーチの広瀬純にざっくりな質問をぶつけてみるとそんなふうに返ってきた。
確かに。なるほど。この夜一番の歓声に迎えられ、大瀬良大地の代打でいとも簡単に流し打つ。とても、高卒新人には見えん…。
我がタイガースのドラ1は開幕からずっとインパクトを残し続けてきたけれど、小園の衝撃はシーズンの第4コーナーからどんどん飛び出すのだろうか。
「あいつには『綺麗に打とうとせんでええ』って言ってるんですよ。フォームを気にし過ぎずに、とにかく『飛ばせ!』って言ってあります。だって、あれだけ飛ぶんだもん。飛んだら、それがいい打ち方なんですよ」
練習中、打撃ケージの背後から小園にどんな声掛けをしているのか?東出に聞けば、そう語る。
小園の高校時代って〈清宮みたく〉大砲の触れ込み◎だっけ?僕の中で、彼のストロングは守備と足が打撃を上回る印象だったのでこれだけの飛距離を目の当たりにすると、近い将来「トリプル3」への期待感が高まってくる。
今回のカープ3連戦はすべてチケットが完売だそうだ。
「試合に出ないのも勉強。ベンチから見るのも勉強ですから」。東出はそう言うけれど、小園を見たいファンは多いんだよ。いや、ちょっと待って。あの飛距離、あの佇まいか…ベンチに座っててもらってもいいかも。=敬称略=