今は結果と勝負しています
【7月9日】
原口文仁をオールスターゲームへ-。実は、半月ほど前、球団広報課長との雑談のなかでそんな話になり、当欄でキャンペーンを張ろうか迷っていた。で、2週間ほど前、実際に執筆を始めた。
同広報は「いい話ですよね」と背中を押してくれた。でも、やめた。なぜって、わざわざそんなこと綴らなくとも、きっと、プロ野球ファンは原口をオールスターへ呼ぶだろう。そう思ったからだ。
やっぱり、現実になった。
皆が原口を夢の舞台へ呼んだ。
「プラス1」選出の会見場から出てきた僕の背中を矢野燿大はポンと叩き、ロッカーへ消えた。背後だったので誰か分からず、振り返ると、矢野は笑みを浮かべた。
「普段はしぶといバッティングを見せているけど、(第2戦の)甲子園でホームランを狙えばいいんじゃないかな。それが一番。フルスイングしてもらってね…」
番記者の囲み取材で、矢野はそんなふうに語ったそうだ。ここでホームラン…。確かに、見たい。
九回、代打・原口。沸きに沸いたスタンドが悲鳴に変わった。最後に原口が出てきて、思いっきりスイングして敗れる。そりゃ悔しいし、Gの背中が遠のく辛さはあるけれど、何か甲子園の夜風に清々しさを感じるのは僕だけか…。
今季の原口は既にサヨナラ打も放ち、甲子園のお立ち台にも立った。それだけで、もう十分なんだけど、フミが平然といつもそこにいるので、僕も欲が出てしまう。読者の皆さんもそうだと思う。
でも、フミの会見を眺めながらふと考えてみた。
大腸がんから復帰、そして、復活-。派手な見出しばかりに目が行きがちだけど、よくよく考えてみてほしい。彼、2月のキャンプやってないんですよねぇ…。
2月1日は、プロ野球選手にとっての元日。特に若い選手にとって、あの1カ月間はシーズンへの決意を全身で表明する期間。まだまだ競争する立場の原口である。1月末にがんを公表し、2月をほぼ病院で過ごした彼のハンディは半端ないはずだ。
何を今さら?ってな話だけど、会見を終えた彼に聞いてみた。
あのさ、フミ。キャンプ、やってないよね?
「はい、そうですね…」
フツーに打席に立って、フツーにバットを振っているけれど、肉体の反応は物足りなくない?
「どうでしょう…。でも、そこまで変わることはないですよ」
いやぁ、それは、ホンネじゃないでしょ。
「キャンプでやりたいことは沢山あります。2月に集中してそれをやれるのは、確かに大きいですよね。(シーズン中の)今、練習量をそこまで上げていけない中でそこの調整の難しさというのは、多少は、感じていますけど……」
それが、ホンネでしょ。大病を患った原口は、もうそこにいないように映ってしまうんだよね…。
「結果が出ないと1軍に残れないし、戦力になれなければ1軍にいる意味はないので。今は結果と勝負しています」-。=敬称略=