コントロールできない風

 【6月1日】

 日米のリーダーがゴルフを楽しんだ千葉茂原のゴルフ場は風が強かったという。令和初の国賓として米大統領を招いた先月末のことだ。日本の総理はゴルフの流れで永田町の「風」について語った。

 「風という言葉には、いま永田町でも大変敏感だが、1つだけ言えることは、風というものは気まぐれで、誰かがコントロールできるようなものではない」

 風……。

 僕の名前は「ふう」と読み、その由来は、父親から聞けば、ある詩からとったそうだけど、風には「空気が(広い範囲を)流れ動く現象」以外にも、いろんな意味がある。安倍サンのいう「風」とは「その身に感じられる人々のようす。世の中の動きやありさま」である。記者とはいえ永田町の取材はないので、与党内で昨今強まる「解散風」についてはよく知らないけれど、プロ野球の世界で時おり耳にする「風」は知っている。

 「ここは本当に、なんていうのか…。そういう風が吹いている、向こうに。ここの強い風は止められない、どこのチームも…」

 このコメント、覚えてらっしゃる読者はいるだろうか。これは前監督の金本知憲が2年前にマツダスタジアムで語ったもの。2試合連続でサヨナラ負けを喫した夜、金本は会見で思わず漏らしたのだが、そこには「誰かがコントロールできるものではない」カープへ傾く「風」がある-そんな語り口調だったことをよく覚えている。

 延長十一回サヨナラ負けの初戦から一夜、この日もマツダの風が吹いたのかどうか。打率1割に満たないK・ジョンソンに適時打を浴び、これが響く結果になった。

 コントロールできない風。止められない風…。でも、それをコントロールし、止めなければ勝てないのであるならば、必死のパッチで、何とかしなければならない。

 矢野は「俺は楽しむと決めている」という。腹のくくり方はハンパない。チームがどんな情勢でも「楽しもう」-。このスタンスはおそらく阪神歴代の監督が掲げなかったこと…球界を見渡しても稀有なこの挑戦にこそ、風向きを変えるチャンスがあるように思う。

 金本政権の3シーズンを振り返ると、阪神はマツダで計38試合を戦い、13勝24敗1分けで勝率は・351。さらにいえば、24の敗戦のうち、逆転負けは半数以上の13試合にも及んだ(サヨナラ敗戦は6)。金本が「マツダの強風」を愚痴りたくなるのもよく分かる。

 悲しいニュースがあったので、当欄からファンの方へお願いがある。鉄人金本が「止められない」とまで言った「風」を止める為に何が必要か。「日本一のファン」の後押しだと僕は大まじめに思っている。赤い絆が強固なマツダで阪神はもがいている。仮にスタンドとの絆の差が、わずかにあるならば、それを覆したい。就任会見で「ファンを喜ばせたい」と誓った矢野である。ならば、ファンも矢野阪神を…。ここでは倍返しの力で虎を活気づける虎党であってほしい。さあ、みんなでマツダの風向きを変えよう。=敬称略=

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