これが「コウスケの考え」

 【2月1日】

 キャビンアテンダントのアナウンスが機内に響くと、もちろんバカンスではないんだけど、何だかテンションが上ずってしまった。 「到着地の天候は晴れ。気温は25度でございます」。夏やん…。

 キャンプイン前に沖縄入りし、今年もプロ野球の正月を迎えた。1軍キャンプに参加する阪神タイガースのメンバーは昨年より3人多い43選手。雲と晴れ間が移ろう宜野座でいよいよ矢野阪神の長い戦いが幕を開けた。当コラム「取材ノート」は3年目の春。昨年、一昨年もそうだったけれど、やはり、2月1日の原稿は悩む。何を書こうか。どう結ぼうか。オフにあちこち取材へ出掛けネタを仕込んだのに、筆が進まない。

 そういえば、昨秋、福留孝介からアイデアをもらったっけ。メイン球場とブルペンを行き来しながら、ふと思い出した。「来年、選手それぞれの野球観について書いてくださいよ」。それはおもしろい。僕も乗り気で「やってみる」と返したものの、通り一遍や建前ではつまらない。選手の本音に迫らなければ読んでも味がしない。だから今キャンプはできるだけ各々の野球観を深掘りしてみたい。

 というわけで、あらためて矢野燿大のそれはどんなものだろう。リーダーの野球観によってチームの向かう先は決まる。僕は昨年10月18日の就任会見以来、矢野の発言は逃さずノートに記している。どんな野球をやるのか。どこにゴールを設けるのか。巨人を強く意識するのか。等々を見返しながら実は少し気になったことがある。これら「ヤノの考え」はほぼ取材での対話であり、紙面やネットを全く見ない選手、スタッフには浸透しないのでは??なんて…。

 実は、監督が〈チーム全体〉に直接投げかける機会は年間を通してさほど多くない。だから、キャンプ前夜のミーティングは貴重な場である。矢野が1月31日に発した出帆の激励を選手はどんなふうに受け止めたのか、気になった。

 「きのう監督が話されていた、『選手がバチバチ(のライバル関係で)でやっていく(べき)』ということは悪いことじゃないと思うし、僕もそうだなと感じましたよ。仲良しこよしで野球をやったって上手くなるわけでもないし、強くなるわけでもない。これは僕もずっと言ってきたけど、グラウンドでは仲良しこよしは一切要らないし、ユニホームを着ている時は先輩、後輩の遠慮も要らない」

 宜野座ドームの傍らで福留に聞けば、こんな答えが返ってきた。

 矢野は福留、糸井の名前を挙げ両巨頭を追い抜く気持ちでやることの意義を説いていたが、その旨をぶつけてみると、41歳はほほ笑みながら矜持を滲ませるのだ。

 「脅かしてもらえる選手が沢山いるということはチームが強くなっていくこと。チーム力があがっていくことだから、いいことだと思う。ただ、僕らも、はい、どうぞということはない。そこは、いつでも……。ということですよ」

 福留孝介が「壁」であり続ければバチバチのステージは上がる。熱い沖縄を満喫したい。=敬称略=

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