虎と鯉…槙原寛己の印象

 【10月30日】

 カープOB会長の安仁屋宗八と並んで試合前の練習を見させてもらった。ヤフオクドームの三塁側ベンチで昔話に花を咲かせていると、ホークスの選手、球界の関係者も続々と挨拶にやってきた。

 「安仁屋さん、こんちは!」

 「おう、テレビの仕事か?」

 「そうなんですよ」

 「この球場でお前さんを見ると思い出す。あの時はやられた…」

 「は、はい…。僕もここの天井を見上げると、思い出しますね」

 お相手は、槙原寛己である。この夜は、TBS系列の日本シリーズ中継で解説をつとめていた。

 1人のレジェンドをとってみても、印象は贔屓球団のファンによってまるで違うものになる。

 虎党にとって槙原といえば、バックスクリーン3連発。そして新庄剛志の敬遠球サヨナラ打…。今でもスカッとするファンは多い。

 でも、鯉党にとって槙原といえば、「完全試合」を喫した右腕。あれは94年5月、巨人対広島戦で達成された快挙で場所は福岡ドーム(当時)だった。打者27人で27アウト。先発オーダーには、現カープ監督の緒方孝市、そして金本知憲も名を連ねていた。

 「そういえば、きょうはカネも解説で来とるらしいのう」

 その通り、金本にとって阪神監督を退いて初の公の場。槙原と同じ放送席でゲスト解説に呼ばれていたのだ。「あいつ、挨拶ないのう」。安仁屋は冗談っぽく笑っていたが、カープベンチでは実に沢山の関係者から「金本さんどちらにいます?」と所在を聞かれた。

 「きのう風さんの原稿を読みましたけど、ちょっと意外でした。金本さんがあんなふうに言う印象はないんですけどね…」

 中国新聞社のカープコラムニストからそんなふうにツッコまれたのは、10月29日の当欄である。

 「カープの秋季キャンプは主力が参加するそうです」。一年前、金本にそう伝えると「そうはいっても、彼らは(秋に)ガッツリ練習しないだろ?」と返された-。

 そのコラムニストは「金本さんは秋に練習してきた人じゃないですか。風さんも見た通り、カープの主力は秋のキャンプでガッツリやりますしね…。カープの常識は阪神の非常識になっちゃうんですかね?」と、首をひねっていた。

 その金本知憲が放送席で「我々も苦労しました」と苦笑したのは終盤1点差まで迫ったカープの粘り。シーズン中の逆転勝利数は3年連続セ・リーグ1位。この粘力の源こそ「カープの常識」からくるものではないだろうか。

 〈選手金本の印象〉は練習、練習…。安仁屋は「阪神というチームは難しいんじゃろな。カネも考えを巡らせて、しんどかったと思う」と同情する。そして続けた。

 「チームが強くなるためにはコーチじゃないんよ。指導者、コーチというのは手を添えるだけ。選手同士が競争するから強くなる。キャンプもそう。休んどったら置いていかれるんじゃけ」

 きょう矢野阪神はキャンプ地の安芸へ入る。阪神の常識をガラッと変える秋にできるか…。=敬称略=

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