靱公園で思い出した「原点」

 【9月11日】

 大阪市西区の靱(うつぼ)公園をご存じだろうか。四つ橋筋からあみだ池筋まで、なにわ筋を挟んで東西に細長い敷地を有する緑豊かな都市公園で、大阪市内にお住まいの方には馴染みの癒やしスポット。デイリースポーツ大阪本社とは目と鼻の先なので、僕も若い頃はよく気晴らしに園内を歩いたものだが、ナントこの公園、時の人の原点だそうで驚いた。

 先ごろ全米オープンを制した、大坂なおみである。テレビ、新聞の報道によると、大阪生まれの彼女は、3歳の頃この公園内の「ITC靱テニスセンター」で初めてラケットを握ったのだとか。大坂は20歳だから、17年前…。01年といえば、僕が転勤先の広島から大阪へ帰ってきた年。当時の公園周り、その風景を思い返しながら、何の関係もないのに、ご近所サンのごとく彼女の快挙にはしゃぐオッチャン記者は、幸せモノだ。

 大坂のテニス人生がこの先どう転ぶかなんて誰にも分からないけれど、なにせ、まだハタチ。栄光も挫折も味わうに違いない。

 伝わってくるエピソードで印象的なのは彼女は「大阪で生まれた」という自身のルーツを大切にしていること。だから、思う。節目や分岐点、或いは紆余曲折のたびに「靱公園」の風景を浮かべるのではないか…と。想像だけど。

 さて、18歳で日本の頂点に立った男はどうなんだろう。この日、鳴尾浜でウエスタンリーグ・オリックス戦に先発した藤浪晋太郎である。苦境に面したとき彼は「原点」に立ち返ることはあるのだろうか。これまで聞いたことがなかったので、本人に確かめてみた。

 「やっぱり、野球を始めた小学生のころは、野球が楽しい、野球が好きというのが根本にあって…あの頃の『楽しかった』という思いがあるから、今こうして、まだ野球を続けられていると思っています。もし今、野球をすることがただただ辛くて、お金を稼ぐためだけのものであれば、『もういいかな…』って気持ちが萎(な)えて辞めているかもしれない。でもそんなことはないですから。去年悔しい思いをしていますし、今年も悔しい思いをしていますけど、今こうして、もっともっと…って思えるのは、そういう原点…野球が好き、野球は楽しいという思いがあるからだと思いますので…」

 春先、当欄で「藤浪晋太郎はもう大丈夫」と書かせてもらった。ずっとそう思っているので訂正するつもりもない。この日の結果は番記者の記事をご覧いただきたいが、2軍監督・矢野燿大の藤浪評(藤浪が勝ったときに書かせてもらいたい)を聞いても納得するし僕は「大丈夫」だと言い切る。

 大阪・堺の公園で父親とボール投げを楽しんだ20年前が藤浪の原点。野球って楽しい…それだけで良かった幼少期は、いま思えば幸せだった。藤浪はどんな難局に行く手を阻まれてもノスタルジックになることはない。だって、あの頃と変わらず野球が好きだから。わざわざ原点に帰る必要のない幸せ…。今度の日曜、藤浪は表舞台へ帰ってくる。=敬称略=

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