落合が「教えた」札幌の夜

 【6月13日】

 荒れる阪神の株主総会はかつて梅雨時の風物詩であった。タイガースにとって耳の痛い…いや、貴重なご意見をいただく公の機会だが、金本阪神に対するそれは、これまで炎上することはなかった。さて、今回はどうだったのか。

 残念ながら、いま僕は札幌にいるので、大阪・梅田の会場まで行けなかった。この日の詳報は番記者の原稿に委ねるとして、目立ったものを紹介すると、こうだ。

 「投手が頑張っているのに、打ってないから成績が良くない。若い選手が出てきたから喜んでいても、次の年には打たなくなる。高いお金を出して外国人を連れてきても打てない。これが何年も続いている。2年前の株主総会でコーチの指導力について質問したときから変わっていない。2年間、何をやってきたのでしょうか」

 本来、発言主を見ないままこの手の原稿を書きたくないが、趣旨がシンプルだから何とかなる。事実誤認とか、やけっぱちではなさそうなので、親会社の阪急阪神ホールディングスとしては「ごもっとも」と受けとめるしかない。

 この夜の成績は記事をご覧いただくとして、念のためチームの現状を記しておく。阪神は56試合を終え、チーム打率、本塁打、得点の3部門でセ・リーグ最低。その一方、投手陣は失点がリーグで最も少なく、防御率は同トップ。つまり、株主さんの仰る通り。

 この御方のモヤモヤ、尋ねたかったことは大きく2点だろうか。

 (1)なぜ、打てないのか。

 貧打に陥る要因が明確に分かれば苦労しない。総力をあげて突き詰め、向上に努める過程です。僕が責任者なら、そう答えるか…。

 (2)指導力について。

 これは難しい…。プロ野球の現場を見てきて言えることは、正解は結果でしかはかれない…ということ。結局、勝ったチームの指導がハナマルと言われる世界。仮に今年、阪神が投高打低のまま優勝したら??ダメ出ししますか?

 先日、MBSの「戦え!スポーツ内閣」という番組で落合博満がコーチ論を語っていた。「コーチの仕事は何もしないこと」。「選手が助言を聞きにきたら教えればいい」。ほかの出演者が「へえ~」と驚いていたが、これは落合の著書『コーチング』でも説いてある。「私にはコーチという仕事は教えるものではなく、見ているだけでいいという持論がある」-。

 落合といえば…今だから書けることだけど、ここ札幌で現役時代の金本知憲を直接指導したことがある。オールスター開催の09年、試合後に宿舎の部屋で2人きり。著書を読むなど落合理論を実践していた金本にとって、願ってもない時間になったそうだ。でもこれはチームの垣根を越えた、あくまで番外編。三冠王3度の落合が中日監督時代、「教えないこと」を哲学に一時代を築いたのだから。

 僕の結論…。勝ちゃいいのだ。落合が自身の哲学に堂々胸を張れるのは、勝ったからである。どれだけ「へえ~」と感心されるような方法論だろうが、負けちゃ、胸を張れないのだ。=敬称略=

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