171センチのアドバンテージ

 【5月25日】

 アンドレス・イニエスタが神戸にやってきた。つい先日このコラムで「もしかしたら…」と書いたばかり。日本サッカーの夢が現実になった。ジーコ、リネカー、リトバルスキー、ストイコビッチ、ドゥンガ、スキラッチ、ストイチコフ、レオナルド…世界的な名選手がJリーグに参戦するたび興奮したが、今回は別格。現役スペイン代表のスーパースターがワールドカップ本番を前に我がホームタウンへ。いやぁ、たまらん…。

 これってもしや…ヴィッセルがJ1を制覇した暁には、イニエスタも我が社を表敬訪問したりするんじゃないの!なんて妄想が膨らむ、きょう此の頃であります。

 自称サッカー好きの大興奮はさておき、目の前は伝統の一戦である。あ…やはりもったいないのでイニエスタのことは、さておかないでおきたい。読者で彼のことを「初めて見た」という方。皆さん同じ印象をお持ちかもしれない。

 イニエスタって小さいな~。

 ヴィッセル神戸オーナーの三木谷浩史と並んでカメラに収まっても、確かにそれは際立つ。前所属FCバルセロナの公式ウェブサイトによると、身長は171センチ。体重68キロとある。180センチ、100キロのウィリン・ロサリオと並んじゃうと、そりゃもう華奢に映るに違いない。ちなみに、タイガースで171センチ…プロ野球名鑑で探してみたが、一人もいなかった。

 サッカーって小柄でも超一流になれるんだ…という単純な話でもない。リオネル・メッシはさらに小さい170センチだけど、もちろん欧州クラブで彼らは平均より小柄だし、彼らより大柄な選手はわんさかいる。体格と才能に恵まれたライバルを凌ぐ為の努力がどんなものだったか知らない。でもきっと、フィジカルを補ってあまりあるアイデア、生き方を心得たから彼らは天才と呼ばれるのだ。

 171センチ。名鑑(公称175センチ)にはそうなかったけれど、実は虎にいる。糸原健斗である。彼がオフの練習拠点にする広島のジム「アスリート」のトレーニングシートに体躯データがあり、ジム代表の平岡洋二が教えてくれた。

 糸井嘉男の一発で菅野智之に土をつけたこの夜だけど、菅野を倒した気にはなれない。唯一「倒す」チャンスがあったとすれば、六回。先頭の糸原が放った左中間への三塁打を生かしていれば…そんなゲームだったように思う。

 逆方向の糸原-。もうファンの間でも定着しているだろう。本紙記録部によれば、糸原の今季40安打のうち、31本が中堅より左方向へ放ったもの。これぞ糸原の生き方だと、僕は認識している。

 身長169センチの阪神打撃コーチ平野恵一はいう。「僕らのような人間は、小柄であることがアドバンテージだと思わないと生きていけないので…。4番タイプの選手を1番から9番まで並べない…それはなぜかを考えることが大事。糸原にはよく話をしますよ」。

 絶対エースを相手にいつも通り左中間を割った糸原の生き方。彼が全試合スタメン出場を続ける理由がよく分かる。=敬称略=

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