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さようなら…阪神の大和

 6回、二塁打を放つ大和
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 【4月14日】

 シックなヤジが飛んだそうだ。

「お~い、間違えて六甲おろし歌うなよ~」。舞台は前夜の横浜スタジアム。ベイスターブルーに染まった客席からやんやの歓声を浴びたのは、大和だ。二度の同点タイムリーで移籍初のお立ち台に上がった背番号9ははにかみながら四度も叫んだ。「最高で~す」。

 ヒーローがファンの合唱に加わる応援歌は「熱き星たちよ」。大和はもう一度叫んだ、「I LOVE YOKOHAMA」-。

 前週タイガースに2戦2敗したDeNAがついに7連勝である。

連日のように伝わってくるのは大和の攻守にわたる躍動感。ハマの番記者によれば「もう、阪神時代とは顔つきが全く違いますよ」なんだとか。両打ちをやめた大和はこの日も巧打。中日の新助っ人ディロン・ジーの内角変化球をライナーで左翼線へ運ぶ二塁打を放ったという。無類の堅守を請われてFA移籍した名手のバットが、ここにきて冴え始めているそうだ。

 ちょっと話をしたくなって、大和に連絡をとってみた。何もご機嫌伺いではない。彼にとって4月14日は心にとどめる日付だから。

 「あの時は聞いてびっくりしましたし、もちろん、忘れられない日ですよ。お世話になった場所ですから…。活躍して、恩返ししたい気持ちはずっと持っています」

 計267人の犠牲者を出した熊本地震から2年が経過した。いまだ3万8112人もの被災者が避難生活を続けている。阪神時代、熊本県合志市の施設をオフの自主トレ拠点にしたことがある。仕事場が関東へ移っても、薩摩隼人として九州への愛情、熊本への恩義がそがれることはない。そんな特別な日に打ったヒット、チームが伸ばした連勝は、大和にとって「意味のあるもの」だという。

 大和の好守でベイスターズが勝利するたび、タイガースが拙守で敗れるたび、おそらくこの種のボヤキは増幅するだろう。「阪神はなんで大和を出したんや」。でももうやめよう。嘆いても大和は帰ってこない。かつて名手福留孝介をして「12球団ナンバーワン」と言わしめた大和の守備力は、もう戻ってこない。だから、当欄でもこの原稿をもって大和の不在を嘆くことはおしまいにする。

 この日2つのEランプで虎の失策数は今季8つ目を数えた。ヤクルトと広島がともに12失策だからリーグワーストじゃない。まだ13試合を終えたばかり。数字でディフェンス力をはかるのはシーズン終了後である。防戦のヤクルト戦で福留が披露した2つのスーパーなダイビング。あのプレーに言葉は要らない。どれだけ秋山拓巳が勇気づけられたか。どれだけベンチが活気づくか。どれだけファンが後押しするか。打力が心もとないときにこそ、あえて書こう。防御は最大の攻撃なり-である。

 大和に代わるピースとして獲得した前DeNA山崎憲晴が阪神で初スタメンを果たした。彼を獲った意義…虎党が分かる日は必ず来る。開幕前、憲晴は僕に言っていた。「絶対、甲子園のお立ち台に上がりますから」。=敬称略=

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