最強男の1年目…5月まで・000

 【3月7日】

 月間打率・000……??

 35年前の紙面をめくると、確かにそんな数字が残る。当時のデイリースポーツによれば、あのレジェンド助っ人の初打席は1983年4月16日。同シーズンの開幕は4月9日だったから、日本デビューは開幕から1週間後。「体調不良」による出遅れだったそうだ。

 「マキハラは凄い速球を投げてきた。コントロールもいい。初打席で別に緊張はしなかったが…」

 あの年の阪神-巨人②戦。0-0の九回裏、先頭で打席に立ったランディ・バースはフルカウントからの速球を見逃し、三振。試合後、甲子園でそんなコメントを残した。プロ初先発を初完封で初勝利を挙げた槙原寛己の前に沈黙。後に「史上最強」と呼ばれる男は出ばなを挫かれ、来日1年目の4月を7試合ノーヒットで終えた。

 バースの再来。右のバース…先月の沖縄キャンプでこれ以上ない賛辞を浴びたのが、18年の新助っ人ウィリン・ロサリオである。宜野座球場のフェンスを悠々越えてゆく彼の打棒を見た者すべてが「本物」を確信し、金本知憲はためらいなく「キャンプMVP」に指名した。さて、あの称賛はどこまで続くのか。心配症な僕はそれでも「疑ってみる」と書いてきた。前日6日のDeNA戦で甲子園デビューし、この日がオープン戦3試合目の出場になったロサリオだが、ここまで6打数1安打(打率・167)という数字が残る。いや、こんな数字はどうでもいい。金本が「クレバーな選手」と評するドミニカンが日本投手との対戦を重ねるこの期間でどんな適応、工夫を見せてゆくのか。そこに関心を持って追ってみようと思う。

 実戦をこなせば他球団から丸裸にされるのは当然。バックネット裏では色んな声が聞こえる。技術的にこのタイプでは珍しいのでは??僕もそう感じるのは、スイング時の軸足の引き方。打ちにいく際に右足が三塁方向へ動くので、「あの打ち方では外の球にバットが届かなくなるのでは」と危惧する人もいる。しつこいようだが、僕はまだ疑心暗鬼。直球で金本知憲に確かめてみることにした。

 「どうだろうな。それについては一概にダメだとは思わないけど…。逆方向を狙ったときに軸足が引ける打者はいるからね。日本でいえば、分かりやすいのは井端(弘和)とか宮本(慎也)かな」

 現段階で特別、問題視はしていない。それが金本の見方。言われてみれば、「一流」の中にそんな技術を駆使する打者はいるのだ。

 この日のロサリオは3打席でノーヒット、2四球。七回に外低めの球を右方向へ打った(二ゴロ)が、この時も軸足を引いていた。

 「井端選手は確実に右へ打つとき軸足を引いていました。しっかり踏み込んで右足を引くので距離が取れる。外の球が届かないなんてことは全くなかったですよ」。これが井端がかつて在籍した中日のチーフスコアラー佐藤秀樹の説明である。まあ1割だろうと、それ以下だろうと、長い目で…。なんせ、あのバースが5月まで・000だったのだから。=敬称略=

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