今年は熾烈。本当に熾烈。

 【2月26日】

 3月30日のプロ野球開幕まで残り31日になった。つまり、本番までいよいよ1カ月。キャンプも残すところ2日になった今の金本知憲の心中を推測したくなった。囲み会見で全て本音を明かすとも思えないし、僕がコソッと聞いたところで漏らすはずもないだろう。

 だから、想像で書いてみる。スタッフのこと、選手のこと…。昨秋から新体制で船出して4カ月。金本はどんな思いで思案を巡らせ仕事に取り組んでいるのか。宜野座球場のバックネット裏、その最上段に並ぶ記者席から指揮官の顔色、動作をずっと観察してみた。 2月1日からひっきりなしに続いたプロ野球OBや評論家の往来もようやく落ち着き、ケージ裏にスーツ姿の来客はほぼいなくなった。今キャンプを振り返ってみると、基本的に金本は「静」だったように思う。いや、ノックも打ったじゃないか。ジョークを交え、雰囲気作りも買って出ていたじゃないか。そういう意味では「動」なんだけど、僕の見る限り、過去2年と比べて、心は限りなく「静」に傾いていたように映る。

 そういえば、初年度のキャンプは自らケージに入って打撃の手本を披露するなど、アクションも情熱的だった。あの頃はどちらかといえばキャンプ、シーズンを通して意図的に発言を熱くしていたようにも感じる。この1カ月間、ずっと監督会見を聞いたわけではないし、例を挙げるとキリがないけれど、過去2年とは発言のトーンも変わってきたように思う。何だろう…それこそ偉そうに書かせてもらうと、「めちゃめちゃ周りが見えている」とでもいおうか…。

 3年目の変化。僕は勝手にそう捉えているのだが、ひとつその大きな要因は体制の変化にあるのではないか。前年までヘッドコーチだった高代延博が作戦兼総合コーチになり、打撃コーチだった片岡篤史がヘッドコーチになったことで生じた変化…高代はヘッドの肩書が取れたことでこれまでよりフレキシブルに指示を送っているように映るし、片岡が投手を含め全体を統括するポジションに就いたことが、うまくハマっているようにも見える。もっといえばファームもそう。育成理念を共有する矢野燿大が2軍監督になったことも金本にとっては非常に大きい。

 監督が組織を全て一人で回すなんて不可能だし、あり得ない。いかに各ポジションの「分担」が機能するか。その土台には絶対的な「信頼」が必要になるが、はっきりしていることは、金本はそこにストレスを感じていないこと。過去にないほど「いい顔」で2月を過ごしている印象が強いのだ。

 さて、3年目の金本に大きな仕事が待ち受ける。あと1カ月間で開幕メンバー28選手を決めなければならない。例えば外野手は誰が残るのか。内野もそう。捕手は2人制?開幕ローテーションは?リリーフは何枚にするのか?時に非情が伴う振り分けが迫るけれど、指揮官の腹は…。金本にそこだけ確認してみると、笑顔なく静かな口調で言った。「今年は熾烈。本当に熾烈だよ」。=敬称略=

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