参考記録??

 【10月15日】

 試合後、ネット裏の記者席からグラウンドに降りてみた。田んぼやん…。よくここで野球をやったな。そう言いたくなるほど、甲子園の素晴らしい黒土は最悪のコンディションだった。イニング間に幾度となく阪神園芸のグラウンドキーパーが飛び出したが、とてもじゃないけど、整備は追いつかない。レギュラーシーズンなら間違いなく「降雨中止」である。もはや選手の大ケガが心配になるレベル。試合運営にあたり、諸々書きたいことはあるけれど、ひとまず両軍の選手を称えるしかない。

 いや本当によく打った。大山悠輔である。きのう当欄で大山について書いた。ポストシーズンで阪神の新人が本塁打を打てば球団史上2人目である。是非とも狙って欲しい、と。あえて「誰以来」とは書かなかったが、きょうはあえて書こう。現在阪神のスコアラーを務める嶋田宗彦が85年の日本シリーズで東尾修から放ったのが球団史で唯一だった。そう、嶋田兄弟の「兄やん」である。大山が32年ぶりに嶋田スコアラーの名を掘り起こしたのだから、きっとオールドファンも喜んでいると思う。

 スコアラーといえば…もちろん敵陣の007も甲子園のスタンドにお見えだった。カープスコアラーの玉山健太は言う。「大山くんは左投手のスライダー、よく打ちますね」。確かに大山が左中間席へ放り込んだのは今永昇太のスライダー。砂田毅樹から放った中越え二塁打もスライダー。ちなみに共同通信デジタルによると、大山が今季打った計47安打を球種別に見ると、スライダーとツーシームの打率が群を抜いている。ただ、今CSでは初戦、2戦と直球もしっかり捉えているだけに、敵が対策を練り辛い打者になってきた。

 そうそう、長時間ゲームだから忘れかけていた。実はこの日、試合開始の4時間半前からスタンドに玉山の姿があった。双眼鏡を手に何やらメモをとっていたので「真剣だなぁ」と声を掛けると、「彼はいつ投げるのかな…」とうめく。視線の先には外野でキャッチボールする藤浪晋太郎がいた。

 宮崎でフェニックス・リーグに参加していた藤浪が帰阪し、この日から1軍本隊に合流した。虎の首脳陣は明言を避けているが、当然「戦力」として呼び戻したわけだ。宮崎での登板(11奪三振の西武戦=12日)も玉山は映像でチェック済みだという。実は僕も宮崎へ行っていたので、聞いたみた。

 藤浪の状態、どう見えた?

 「良かったですよ。ただ、あの試合は球審のストライクゾーンがすごく広かったんです。投げてる本人も分かっていたはずです。だから、あれは参考記録として…」

 参考記録?それを言うなら、この日の泥んこのコンディションだってね…。最後は根比べで負けたような格好だけど、後味はあまりよろしくない。とにかく、ファーストステージはあと1試合。大一番への助走は長いほうが勢いがつく。大山はさらにカープを惑わす打席を見せられればいい。そう、すべて前向きに考えよう。=敬称略=

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