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緒方選手から得た盗塁極意「ケツを汚せ」

 金本知憲氏がプロ野球人生の秘話を語る連載「21年間の舞台裏」。第7話は00年に達成した3割30本塁打30盗塁の記憶。「まぐれ」と振り返る30盗塁到達の裏には、3年連続盗塁王に輝いた、あの同僚から盗んだ特別な技術があった。

 ケツを汚せ!00年のキーワードはこれでした。プロ野球史上、8人しか達成者のいないトリプル3の記録に名を残せたことは僕の誇りです。

 3割30本30盗塁で一番ハードルが高かったのは盗塁でした。あれだけ走れたのは絶対にまぐれ。だって、前年(99年)10盗塁で、その前のシーズンは9盗塁ですから。

 30個も走れたのは、笘篠賢治守備走塁コーチのおかげです。「カネ、アウトになってもいいぞ。責任はオレがとる」。笘篠さんがそんなふうに言ってくれたおかげで積極的になれたのです。三村敏之監督(94~98年)のときも、盗塁のサインはよく出ていました。でも、アウトになったら怒られるという気持ちがまず先にありました。達川光男さんが監督になられたシーズン(99年)は大下剛史ヘッドコーチに怒られるのが怖くて、ちゅうちょすることが多かった。大下さんから「走れよ!」とは言ってもらいましたけど、状況的にどうかなというときは、やっぱりためらってしまって…。そういうときにも走れたのは、笘篠さんがベースコーチになってから。気持ちの部分がとても大きかったのだと思います。

 あいつはそこそこ足が速いのになぜ盗塁の数が伸びないのか。そんなふうに言われたことがありました。そこで参考にしたのは、95年から3年連続盗塁王のタイトルを獲得した緒方孝市選手のスライディング。たまたまニュースで見た彼の盗塁がヒントになりました。

 あれ?オレのスライディングとは全然違う。緒方の盗塁はケツまでユニホームが汚れとるのに、オレは汚れとらん-。僕の滑り方では、泥がつくのはひざから下だけで、お尻は真っ白でした。映像で見くらべると、僕はスピードがめちゃくちゃ落ちて、緒方選手は落ちなかったのです。

 練習中に試してみました。2通りのやり方で5回ずつタイムを計測すると、5対0。明らかに緒方選手のスタイルが速かった。お尻を汚せばセーフになる。緒方選手から盗んだスライディングの技術が、無理だと思っていた30盗塁を可能にしたのです。

 翌年、監督に就任した山本浩二監督は、とにかく走れ!走れ!と言いました。4番の僕にです。そのワケは…。

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