松井選手のえげつない場外弾 僕のは…

 金本知憲氏がプロ野球人生の秘話を語る連載「21年間の舞台裏」。第4話は、ともに今季限りで現役を引退した松井秀喜氏と張り合った記憶です。同じシーズンの同じ月に同じ球場で場外弾を放ったゴジラを、どんな感情で眺めていたのか。

 異常な音でした。それはもう、えげつなかった。レフトを守っていてもはっきりと聞こえました。バットがパカ~ンと折れたような衝撃音。今でも耳に残っています。

 松井秀喜選手の打球です。96年の8月に広島市民球場の場外に消えたホームランは、とても印象深い。というのも、この10日ほど前の阪神戦で、僕も広島球場の場外へホームランを打っていたのです。投手は現在、阪神で打撃投手を務める山崎一玄くん。のちにチームメートとなった彼から「あのとき、カネさんに打たれた打球は忘れられませんよ」と言われたことがあります。でも、松井選手の場外弾のほうが、はるかにすごかった。

 僕はその年の5月に東京ドームの右翼席の上にある、長嶋茂雄さんの看板に当てる一発を打ちました。以前よりは大きいのを打てるようになったかなと思っていたけど、あのホームランには完敗です。僕の場外弾の記憶は、松井選手のえげつない飛距離に吹っ飛んでしまいました。

 プロ3年目に17本塁打、4年目に24本塁打。5年目のこの年は初めて打率を3割に乗せ、27本のホームランを打つことができました。松井選手はこのシーズン、年間38本打ちましたが、彼の打球、飛距離を意識するようになったのはこのころです。負けたくない。そんな思いで、打撃練習に取り組んでいたことを思い出します。

 本塁打を打つと首脳陣から怒られていた時期もありました。確かに僕も含めて、金本という選手がホームラン打者になるなんて、誰も予想していませんでした。若いころに一番怒られたのは打撃よりも走塁だったかもしれません。そういう意味では、プロ初盗塁の記録も僕の野球人生でひとつの節目だったと思います。

 プロ3年目でした。94年6月1日の阪神戦で場所は甲子園球場。タイガースのOBとなった今となっては、この試合は興味深いシーンがたくさん詰まっています。カープが6対4でリードしていた八回表。代打で内野安打を打った僕は盗塁を狙いました。バッテリーは久保康生投手と木戸克彦捕手。聞き覚えのある名前です(笑い)。そしてこのあと、あの選手がすごいことを…。

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