「お前さえいなければ金賞取れてた!」高校時代の演奏会がトラウマ……責められた学生は楽器修理職人に 10年後再会した因縁の相手から思わぬ申し出【漫画】

物事にストイックに打ち込む人は、周囲から敬遠されることがあります。しかしそれは、情熱を持って物事を進めようとする強い心の表れなのかもしれません。半熟たまごさんの作品『RE・PAIR』は、トラウマを抱えた主人公と因縁の相手の邂逅が描かれています。

ある日、楽器屋に勤める戸田のもとに、吹奏楽部の女子高生がやってきました。戸田の楽器修理は早くて丁寧と評判のようで、女子高生が持ち込んだトランペットもキレイに修理します。そんな戸田ですが、じつは学生時代に参加したコンクールで、同級生の古賀から「お前のソロが無ければ!金賞取れてたんだ!」と怒鳴りつけられたことが原因で、吹奏楽の曲が聴けなくなっていました。

彼が学生時代の思い出を語っていると、因縁の相手である古賀が店に現れます。古賀は「急で悪いが、今週末の俺の演奏会、聞きに来い。」と戸田にいいます。戸田は、当時あんなに怒っていたのになぜ自分に頼むのかと疑問でしたが、古賀によると自分が顧問をしている吹奏楽部の楽器点検に来てほしいそうです。

戸田は自分がトラウマで苦しんだ10年間、古賀はなにも感じてなかったのかと苛立ちますが、生徒たちを放っておけないという思いから演奏会へ行くことを決心します。その決意の裏には、もう一度吹奏楽を楽しめるようになりたい想いもあったようです。

演奏会当日、点検を終えた生徒たちはチューニングをおこないます。しかし、トランペット担当の3年生・鈴木の音程がどうやら低いようです。戸田が確認したところ、音程に影響の出やすい2番官に小さな穴が空いていたことが発覚しました。溶接すれば治るものの、本番までに修理を終えるのは難しいといいます。

そこで古賀は、鈴木に「今日は出るな」と指示します。しかし、今日は3年生にとって最後の定期演奏会のため、他の生徒達もなんとしても全員で出たいと訴えました。それに対し、古賀は「この吹奏楽部を創ったのは俺なんだよ!」「楽器が壊れてました?そんな不注意でめちゃくちゃにされてたまるか!クソが!」と生徒を怒鳴りつけます。

凍りついた空気のなか、一歩前に出たのは戸田でした。戸田によると、トランペットの2番官に穴が空くことは珍しく、これは生徒たちの手で酸化した経年劣化によるキズだといいます。戸田は彼女たちの努力を褒めると、どうにか演奏会に出してほしいと頭を下げました。

その一言に、古賀は自分が吹奏楽部の顧問になった当初のことを思い出します。そのころの部員たちは弱小チームで、演奏はあまりにもひどい音色でした。しかし古賀は、楽譜をボロボロになるまで読み込み指導をつづけた結果、3年連続金賞を取るまでのぼり詰めたのです。厳しい指導のなかで多くの部員たちが辞めていきましたが、鈴木をはじめ一部の生徒たちが必死に食らいついていきました。

生徒たちや戸田の想いを受け取った古賀は、すぐさま壇上へと走っていきます。そして古賀は、1時間後ろ倒しにすると伝えたうえで「このたびの不手際は私に全責任がございます」と観客たちに頭を下げたのです。

壇上から降りたあと、古賀は「生徒たちの演奏会のためによろしくおねがいします…」と戸田にも深々と頭を下げました。その後修理を終えた戸田は、ホールに座り演奏を聴きます。あのトラウマ以来久々に聴いた吹奏楽は、とても澄んだ空のような音色が響いたのでした。

読者からは「それぞれの葛藤が描かれていて素敵!」「読んでいて胸が熱くなった」などの声が寄せられています。そこで、作者の半熟たまごさんに話を聞きました。

■古賀先生のモデルは作者の高校時代の吹奏楽部顧問

-楽器修理職人を主人公に、物語を描いたきっかけを教えてください

最近見た作品から影響を受け、「トラウマを乗り越え、誰かを救う」ような人物の物語を描きたいなと考えていたところ、学生時代に楽器屋さんで楽器のマウスピースを直していただいた時のことを思い出し、楽器屋の店主を主人公にしようと思いました。

-楽器の表現などは、半熟たまごさんのご経験を含めて描かれているのでしょうか?

はい、学生時代の吹奏楽部員だったころの体験をもとに描いています。長時間練習した後は、手に銅のさびが付きますし、楽器は違うのですが、楽器の持ち手の部分に小さな穴が開いたこともありました。そのときの修理は漫画と違い、ちゃんと期間を取ってやっていただきました…!

-主人公の因縁の相手でもある古賀先生の存在が印象的でしたが、どのような人物だとご想像しますか?

一応、モデルは高校時代の吹奏楽部顧問の先生をイメージしてキャラクターを作りました。それを踏まえてにはなりますが、音楽に対してまっすぐでストイックな人物だと思います。元々の性質としては「顧問」というより、「音楽家」の方が近いと思います。ですが、今回の物語の終盤では、主人公たちとのやり取りによって、生徒らの「音楽への情熱、想い」を感じ、最終的には「顧問」としての責務を果たしたのではないかと思います。

(海川 まこと/漫画収集家)

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