サッカーW杯に興味ゼロの50代男性 職場での「試合見た?」が怖い…静かな疎外感を味わう日々「みんな楽しそうだな」【漫画】
■日本中が盛り上がるほど、なぜか肩身が狭くなる
いよいよサッカーW杯が開幕。開催地から遠く離れている日本国内でも、街の空気が少し変わります。テレビでは特集番組が組まれ、コンビニには応援グッズが並び、SNSも試合予想や代表選手の話題で埋め尽くされます。
多くの人にとっては待ちに待った祭典ですが、その熱気を少し離れた場所から眺めている人もいます。
50代会社員のFさんもその一人です。
Fさんは昔からスポーツ観戦にほとんど興味がありませんでした。中学、高校時代も運動部ではなく吹奏楽部に所属し、放課後はトランペットの練習三昧でした。プロ野球やサッカーの話題で盛り上がる友人たちを横目に見ながらも、自分から試合を見ようと思ったことはほとんどありませんでした。
そのため現在も、サッカーのルールは最低限しかわからず、代表選手の名前も数人聞いたことがある程度です。
ところが、この時期になると周囲は当然のように盛り上がります。
ある日、同僚から「いよいよ始まるね!初戦は朝5時キックオフだよ。午前休にする?」と声をかけられました。
Fさんは一瞬返答に迷いながらも、「そうですね。頑張ってほしいですね」と無難に答えました。
本音を言えば、「仕事を休むほど興味はない」のですが、なぜかそれが言えませんでした。
■WBCでも同じだった…毎回始まる予習生活
実はFさん、この感覚を以前にも経験しています。
野球の国際大会であるWBCが開催されたときも、周囲は連日大騒ぎでした。
しかしFさんは野球にも詳しくありません。
大谷翔平の存在こそ知っていますが、他の日本代表選手についてはほとんど知りません。 ルールもよくわからないのです。
それでも職場では、「昨日見た?」
「吉田選手の逆転ホームランは震えたよね」
と話題が続きます。
その輪に入れないことに居心地の悪さを感じたFさんは、仕事から帰宅するとスポーツニュースを視聴するようになりました。
「最低限の知識だけでも覚えておこう」
そう考えたのです。
ニュース番組では、
「○○選手が絶好調です」
「△△選手のコンディションが心配です」
と解説されますが、Fさんには誰が誰なのか判別できません。
ようやく覚えたと思った選手名も、翌日には曖昧になってしまいます。
■「興味がない」と言いづらい不思議な空気
Fさんが最も困るのは、スポーツそのものではありません。
周囲が当然のように盛り上がっている空気です。
映画やドラマであれば、「見ていません」で済みます。
しかしW杯やWBCのような国際大会では、そうもいきません。 「みんなが応援しているもの」という雰囲気が生まれるからです。
もちろん誰かに責められたことはありません。
それでも、
「興味ありません」
と言った瞬間に場の空気を壊してしまうような気がするのです。
そのためFさんは、毎回なんとなく話を合わせています。
ところが詳しい話になるとついていけず、結局は笑顔で相づちを打つだけになります。
一方で、今回のW杯については少しだけ安心していることもありました。
試合時間が早朝から昼にかけて行われるものが多いと聞いたからです。
以前の大会では、深夜にスポーツバーへ集まったり、仲間同士で観戦会を開いたりする話を耳にしていました。もし誘われたら断りづらいだろうと感じていたため、「今回はその心配がなさそうで助かった」と胸をなで下ろしています。
職場で交わされる熱い試合談義を聞きながら、Fさんは「みんな本当に楽しそうだな」と心の中で思いながらも、自分はその熱量にどうしてもついていけないことを悟ります。
熱狂の輪の少し外側で、今年もまたスポーツニュースを見ながら選手の名前を覚えようとするFさん。
けれど翌朝には、覚えたはずの選手の名前はほとんど頭に残っていないのでした。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)
