交通事故から8カ月 溝の中で動けず、死にかけていた犬→車椅子でルンルン散歩♪「ご飯はくれないの?」と甘える姿も

「歩けない子が溝にはまったままなら、待っているのは死です」

交通事故に遭い、側溝の中で動けなくなっていた犬のアキちゃん。命の瀬戸際にいたその犬が、約8カ月後には保護主の隣にそっと座り、穏やかな表情を見せるまでに回復しました。

その姿を紹介したInstagramの投稿には、「今が幸せそうで良かった」「優しい人に出会えて本当に良かった」「こんなに穏やかな顔になるなんて」といった声が相次いで寄せられています。

投稿したのは、保護活動に取り組む岡本裕二さんと宇治川大介さん(@daisuke.ujigawa)。保護施設「まあくんハウス」(山口県防府市、岡本裕二代表)の活動を通じて、行き場を失った犬や猫たちを支えています。

■「ひかれた犬がいる」一本の連絡から始まった

アキちゃんとの出会いは、8カ月ほど前のこと。岡本さんのもとへ、ボランティアから「ひかれた犬がいる」という連絡が入りました。

「警察も来ていると聞いていたので、きっと保護してくれているだろうと思っていました」

しかし、現場に向かった岡本さんが目にしたのは想像とは異なる光景でした。アキちゃんは側溝の中で横たわり、ほとんど動けない状態だったといいます。

「野犬だからなのか、物として扱われたのか…。助けられることなく、その子は溝の中へ入れられていました」

辺りはすでに暗くなっていましたが、かすかに動いた瞳によって居場所を見つけることができたそうです。

「溝の中で動けず横たわる姿を見た瞬間、言葉を失いました」

その時の光景は今も鮮明に記憶に残っているといいます。

■「かなり高齢なのでは」と思ったほど衰弱

保護当初のアキちゃんは、あまりにも衰弱していました。

「かなり高齢の子なのかなと思っていました」

しかし現在の様子を見ると、推定年齢は3~5歳ほどではないかと感じているそうです。

「あの頃は、生きることに精いっぱいで、本来のアキちゃんの姿が見えなくなっていただけだったのかもしれません」

当時は自力でほとんど動くことができず、ご飯も手からでなければ食べられない状態でした。少しでも体力をつけてもらうため、朝・昼・夕・夜の1日4回に分けて食事を与え、スタッフと協力しながら懸命なケアを続けたといいます。

■車椅子が変えたアキちゃんの表情

そんなアキちゃんに大きな変化をもたらしたのが、支援によって届けられた車椅子でした。車椅子で散歩ができるようになると、表情はみるみる変わっていったそうです。

「今ではルンルンとお散歩を楽しみ、時にはわがまままで言うようになりました」

かつては苦しそうで、どこか諦めたような表情をしていたアキちゃん。現在は、生きる喜びを全身で表現しているようだと岡本さんは話します。

「『生きるって楽しい!』と伝えてくれているように感じます」

命の瀬戸際にいた犬が、散歩を楽しみ、自分の気持ちを表現するようになった…その変化に、岡本さんは何度も胸が熱くなったそうです。

■「きっとこの子にも素敵な未来が待っている」

岡本さんは、現在のアキちゃんの姿を見るたびに、以前保護した「ほまれちゃん」のことを思い出すといいます。

ほまれちゃんもまた、アキちゃんと同じように大きな事故に遭い、足がちぎれそうになるほどの重傷を負った保護犬でした。

何度もの手術と長い通院生活を乗り越えたほまれちゃんは、その後、優しい里親とのご縁に恵まれ、現在は幸せに暮らしています。

「実はアキちゃんの表情や仕草、少しわがままなところまで、ほまれちゃんによく似ているんです」

岡本さんはそう話します。

保護当初は生きることだけで精いっぱいだったほまれちゃんも、回復するにつれて自分の気持ちを表現するようになり、甘えたり、わがままを言ったりする姿を見せるようになったそうです。そんな姿が今のアキちゃんと重なって見えるといいます。

「だからこそ、アキちゃんにもきっと素敵な未来が待っていると思わずにはいられません」

命の瀬戸際にいた犬が、少しずつ心を開き、人を信じ、喜びや感情を表現するようになる…岡本さんは、その変化を目の当たりにするたび、命の力強さと生きようとする尊さを感じているそうです。

■隣に座った“当たり前ではない幸せ”

特に忘れられない出来事があります。ある日の夕食中、アキちゃんが自然と岡本さんの隣へやってきたのです。

「ご飯はくれないの?一緒に食べるの?」

そんなふうに話しかけているような表情だったといいます。もちろん本当の気持ちは分かりません。それでも、その時のアキちゃんは人を信頼し、家族と同じ空間で安心して過ごす、ごく普通の家庭犬のように見えたそうです。

「その何気ない光景が、本当に愛おしくて胸がいっぱいになりました」

なぜなら、アキちゃんは本来、その時間を迎えられなかったかもしれない命だから。

「あの日、溝の中で誰にも気づかれず、そのまま命を落としていたかもしれない」

そう考えると、隣で穏やかに過ごしている今の姿は奇跡のように感じられたといいます。

■いつかもう一度、自分の足で

現在もアキちゃんは毎日、車椅子で散歩を続けています。そして岡本さんには、どうしても叶えたい願いがあります。

「いつかもう一度、自分の足で歩かせてあげたいです」

獣医師からは、水中での運動が体への負担が少なく、リハビリ効果も高いと聞いているそうです。そのため、いつかアキちゃん専用のプールを作りたいと考えています。

交通事故に遭い、誰にも気づかれなければ命を落としていたかもしれないアキちゃん。しかし今は、多くの人の支えを受けながら未来へ向かって歩み続けています。

その穏やかな表情は、「生きたい」という強い思いと、人の優しさがつないだ命の尊さを静かに物語っているようでした。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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