メンチを切り“やんのかステップ”で笑わせた「やんちゃ猫」 猫白血病の発症から下半身麻痺、1歳を迎えて旅立つまで

「あんなに変わっている子は初めてでした。ヒヤァやホーッホーッと、猫らしからぬ声で鳴き、飼い主にはメンチを切る。隙あらば噛みつき、“やんのかステップ”も踏んでくる宇宙人顔のヤンキーやんちゃボーイでした」

亡き愛猫たね坊くんへの愛を、そうこぼすのは飼い主みゆねこさん(@nenetokaka)。

たね坊くんは元野良猫。猫白血病ウイルス感染症と生き、1歳1カ月で天国へ旅立った。

■先代猫と同じ“猫白血病ウイルス感染症キャリアの猫”を預かることに

沖縄・宮古島に住む、みゆねこさん。たね坊くんとは、2024年6月末に出会った。きっかけは自身が所属している、主に猫のTNR活動(※飼い主のいない猫に不妊・去勢手術をし、もといた場所へ戻す活動)を行うグループに相談が入ったこと。たね坊くんは猫風邪を患いながらヨチヨチ歩き、他猫と行動していた。

「車に轢かれそうだったので、保護しました。保護後はノミ・ダニなどを駆除し、猫風邪の治療を受けました」

額にある“ひまわりの種模様”から連想し、名前は「たね」に決定。当初は他の預かりボランティア宅で過ごしていたが、保護から1週間後に猫白血病ウイルス感染症を患っていることが判明し、みゆねこさん宅へ。

実はみゆねこさん、1カ月半前に猫白血病ウイルス感染症キャリアの姉妹猫を看取ったばかり。自宅に猫がいなかったため、他県にある猫白血病ウイルス感染症キャリアを受け入れてくれる施設への引き渡し準備を進める間、たね坊くんを預かることになった。

「母猫からの抗体移行で陽性の場合は陰性になる可能性もあるので、抗ウイルス作用や免疫増強作用があるインターフェロンを連続で5クール(5カ月間)投与しましたが、陰転しませんでした」

■ユニークなメンチ切りや“やんのかステップ”にたくさんの笑顔を貰った日々

猫白血病ウイルス感染症は、感染している猫との毛づくろいや食器の共有によってうつると言われている。母猫が感染している場合は胎盤や母乳などを介して感染することも。発症すると、リンパ腫などの病気を引き起こすが、中には発症せずに天寿を全うする子もいる。

「環境の変化やちょっとしたストレスが発症のきっかけになることもあります。だから、たね坊を飛行機で他県に移送する決断がなかなか下せませんでした」

そうした状況の中で、みゆねこさんは大きな決断をする。たね坊くんを愛猫として迎え入れたのだ。

「正直、発症したらお金も労力もかかるし、覚悟もいります。でも、先代猫と暮らす中で得た知識や経験を集結すれば、できるだけ長く元気に暮らせるようにすることが私にはできるんじゃないかって思って」

一緒に暮らし始めると、“やんのかステップ”やメンチを切るなどの強気な姿に何度も笑わされた。

「好きだったのは、暗闇でのボール遊び。寝ようと思って電気を消すと、フェルトボールを咥えてきて。投げると咥えて持ってくるという遊びを暗闇で延々とやらされました(笑)」

一方、通院時はお利口。2週間に1度、抗ウイルス薬を打ちに動物病院へ行く時には「たねー、病院に行くよ」と言うと、自らキャリーケースへ。

「SNSでは、“やんのかステップ”を見て、ファンになってくれた方も多くて。メッセージを貰うたび、たね坊は色々な方を密かに元気づけている、すごいことだなと嬉しくなりました」

■お迎え9カ月後に直面した“猫白血病ウイルス感染症”の発症

笑顔溢れる日々が一変したのは、お迎えから9カ月ほど経った2025年4月26日。瞳孔の大きさが左右で異なる「瞳孔不同」が見られ、かかりつけ医へ行ったが、原因は不明。だが、血液検査では半年前よりも白血球が大幅に減っており、貧血気味であることが分かった。

瞳孔不同は4~5日で治まり、貧血も改善したが、元気がないと感じる日が増えたそう。5月中旬には肝臓の数値が高くなっており、腸間膜のリンパ節がやや腫れていた。

「顕微鏡で血液を見てもらったら、白血球の一種である好中球に異常があると言われて…。

リンパ腫だったら嫌だなと思い、肝臓とリンパ節の針生検をしてもらいましたが、異常は見られませんでした」

5月17日頃から、たね坊くんはジャンプを失敗するようになった。先代猫たちと同じ…。そう気づいたみゆねこさんは獣医師と相談し、様々な病気の可能性を考えて治療に取り組んだ。

「宮古島ではCTやMRI、PCR検査、髄液検査を受けることが難しく、原因の特定が困難だったので、猫白血病ウイルス感染症によって引き起こされる可能性が高い疾患への対処療法を行っていました」

那覇まで行けば設備の整った動物病院があり、病気を特定できる可能性はあった。すでに症状が出て辛そうなたね坊を飛行機に乗せ、検査するという選択を下すことはできず。「これでいいのだろうか」と自問自答しながら、ひとつひとつの症状と向き合う日々が続いた。

■1歳の誕生日を迎えたい--下半身麻痺になった愛猫を支えた日々

5月21日、たね坊くんは夜に後ろ足が麻痺し、下半身不随に。排尿障害が現れたため、尿を出しやすくする薬を与え、朝晩、圧迫排尿を行うようになった。

肛門の開閉をコントロールする肛門括約筋は麻痺。便が溜まると漏れ出すので、おむつが必要になった。

「背中の痛みからか、持ち上げたり抱っこをしたりすると嫌がったので、痛み止めも処方してもらいました。治療を始めてからは食欲が少し戻り、安定した日々が送れていました」

無事に1歳を迎えたい。痛みやしんどさを取り除きながら、一緒に生き切りたい。そう思いながらケアに励む日々だった。

だが、発症から3週間後、貧血が進行し、発熱や黄疸が見られた。持ち前の生命力と的確な治療のおかげで、なんとか回復したものの、貧血はさらに進行し、6月24日には再び発熱や黄疸が見られた。

「最後の望みをかけて、マイルドな抗がん剤を打ちました。これが効かなければ、もうゆっくりしようねと伝えて。この頃には寝たきりでしたが、抗がん剤を打った日は前足を使って少しだけ歩いてくれました」

少しでも長く穏やかに過ごせるよう、自宅には動物用の酸素室をレンタル。だが、6月28日の夜、圧迫排尿後に呼吸が早くなり、みゆねこさんは別れが近いことを悟った。

「だから、たね坊を保護してくれたボランティア仲間に連絡し、会いに来てもらいました。その日は酸素室の前に布団を敷き、右手を酸素室の中に入れて、たね坊を触りながら朝までウトウトしました」

■一緒に生きた11カ月を振り返って浮かぶのは、”笑顔”

翌朝、みゆねこさんは夜を乗り切ってくれたたね坊くんに「もうちょっとだけ、待っててね」と伝え、敷地内にある仕事場へ。パートナーが様子を見た15分後に自宅へ戻ると、たね坊くんは旅立っていた。

「かすかにゴロゴロ音が聞こえました。きっと、私が見に行く直前まで息をしていたんだと思います。すぐ仕事場へ戻らなければならなかったので、パートナーと一緒に少しだけ泣きました」

最期まで生命力の強さを見せ、ニャン生を生き切った、たね坊くん。一緒に過ごせた時間は11カ月と21日だったが、その日々は密度が濃く、思い出すと涙より笑顔がこぼれるとみゆねこさんは話す。

「猫は、いつ死ぬなんて考えない。人間は先の不安ばかり考えてしまいますが、猫は今を一生懸命、生きてる。私もそんな風に生きていきたいなと教わりました」

早くまた、地球に戻っておいで。そうたね坊くんに話しかけているみゆねこさんは、治療薬が確立されて猫白血病ウイルス感染症が不治の病でなくなる日を心から待ちわびている。

猫白血病ウイルス感染症のリアルを教えてもくれる、たね坊くん。虹の橋では、あらゆる辛さから解放され、健やかに過ごしていてほしい。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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