相続した実家を放置したら固定資産税が6倍に…?知らないと危険な“空き家の落とし穴”【税理士が解説】
会社員のBさん(50代)は、昨年亡くなった父の実家を相続しました。築40年以上の木造住宅で、庭の柿の木が毎年のように実をつけています。ただ、いまは県外で夫と暮らしており、実家に戻る予定はありませんでした。
Bさんは「とりあえず空き家のまま置いておけば、税金はそんなに変わらないはず」と思い、相続後は特に手をつけずに1年が過ぎました。ところが春に届いた固定資産税の通知書を見て、昨年よりも金額が上がっており驚きます。
税金増額の理由がわからず、市役所に相談してみても「住宅用地の特例」や「特定空き家」といった聞き慣れない言葉が並び、不安はさらに大きくなりました。
Bさんのように、「住む予定はないけれど、相続した実家をどう扱うべきか悩んでいる」という人は少なくありません。放置しておくと本当に税金は高くなるのか、どんな状態が危険なのでしょうか。税理士の鈴木雅人さんに話を聞きました。
■住まない実家で起きやすい税金トラブルとは?
ー親の家を相続したのに住んでいなくても、固定資産税が上がるのはなぜですか?また、長く放っておくと、どんなリスクがありますか?
家と土地の両方を相続した場合でも、状況によって固定資産税が上がることがあります。まず注意したいのは、家を取り壊して更地にしたケースです。家が建っている土地には「住宅用地の特例」という軽減措置が適用され、固定資産税が抑えられています。
しかし、建物を壊すとこの特例が使えなくなり、固定資産税が最大6倍に跳ね上がることがあります。
また、空き家を長期間放置して老朽化が進むと、倒壊の危険が高まり、自治体から「特定空き家」に指定されることがあります。特定空き家になると、やはり住宅用地の特例が外れ、固定資産税が大きく増える原因になります。行政の改善命令に従わない場合は過料が科されることもあります。
一方で、相続して家がそのまま建っており、危険性がない状態であれば、固定資産税が上がることはありません。建物は年数とともに評価額が下がるため、税額もゆるやかに下がっていくのが一般的です。
つまり、相続した家を放置して危険な状態にしないことが重要です。住まない場合でも、税金や管理の負担を考え、早めに活用方針を決めておきましょう。
ー住まない家を貸したり売ったりすると、税金はどう変わりますか?
まず、家を賃貸に出す場合、貸している間(持っている間)は固定資産税がかかり続けます。さらに、家賃収入は不動産所得として扱われ、所得税や住民税の課税対象になります。
家賃から固定資産税・減価償却費、修繕費などの必要経費を引いて利益が出る場合、給与所得などと合算して確定申告が必要です。
次に家を売却する場合、売った後は翌年以降の固定資産税はかからなくなります。ただし、売却して利益が出た場合、その利益に対して所得税と住民税がかかります。
相続した空き地を売る場合、一定の条件を満たすと、売却費から最大3,000万円を差し引ける特別控除が使える場合があります。税負担を大幅に減らせる制度なので、利用できるか確認しておきたいところです。
注意点として、家を売却すると、相続税の計算で使える「小規模宅地等の特例」という有利な制度が使えなくなるデメリットがあります。
ー相続した家を放置しないために、どんなことをしておくと安心ですか?
相続人できちんと話し合い、どなたが相続するのかを明確にしておくこと、相続登記や相続税申告を忘れずに行うことがいいと思います。
相続して終わりではありません。その後、その家を貸すのか売るのかまで踏まえて、不動産税務を専門にしている税理士に相談にいくと、先の計画も立てられ安心だと思います。
◆鈴木雅人さん(すずき・まさと)
「不動産と相続」専門の税理士法人。不動産オーナーや不動産会社の税務顧問から確定申告、相続税申告、相続対策まで幅広く支援。豊富な実績を基に他の専門家と連携し、複雑な不動産・相続の課題をワンストップで解決へ導く。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)
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