そろそろ孫の顔を……家庭円満な息子夫婦が「子どもはいらないよ」と衝撃発言 孫を抱きたいという願いを封印すべきでしょうか?【コミュニケーションコンサルタントが解説】

60代のAさんは、息子夫婦と同居しています。Aさんの妻と、2年前に結婚した息子とお嫁さんの4人暮らしです。毎日わいわいと楽しく、家族円満な生活を送っているのですが、Aさんには気がかりがありました。それは「孫の顔が見られる日は、来るのだろうか…」という心配です。

息子夫婦には、普段の会話中に子どもに関するものがなく「もしかしたら子どもを産む気はないのでは?」と頭の片隅で考えていました。この心配についてAさんは、思い切って息子に尋ねると「子どもはいらないよ。お金もかかるし」とあっさり答えるのでした。

Aさんは息子の返答を聞くと、これに対する反論はできないでいました。しかし本当は、自分の孫を抱いてみたい気持ちもあります。息子夫婦と今後、どのように接すれば良いのでしょうか。コミュニケーションコンサルタントの鮎永麻琴さんに話を聞きました。

■自分の気持ちを伝えつつ、相手の気持ちも尊重することが大事

-「孫がほしい」という気持ちが強くなる一方で、息子夫婦の選択を否定したくありません。どう折り合いをつければいいのでしょうか

長年、親という立場で「子どもが幸せになりますように」と願ってきた方ほど、結婚後の息子夫婦に対して「次は孫かな」と自然に期待を寄せてしまうものです。だからこそ息子夫婦が「子どもは持たない」と決めたとき、もしくは長年その話が出ないまま時が過ぎていくとき、胸の奥にぽっかりとした寂しさが残るのは決して不思議なことではありません。こうした心の葛藤には「期待と現実の不一致」という構造があります。

・息子が結婚した→孫ができるかも→できない(しない)

・親として何かしてあげたい→でも話題にすら出せない

・喜びを感じたい→でも我慢が必要

このようなズレが蓄積すると、無意識のうちに“圧”や“干渉”という形で相手に伝わってしまうこともあります。たとえ言葉にしなくても、表情や空気感、沈黙の裏にある感情は伝わるものです。そんなときに大切なのは、まず「寂しいと感じている自分を責めない」こと。そして、他者の選択を尊重するのと同じくらい、「自分の感情」も大切に扱っていいのだということです。

-軽く話題に出してよいのか、それとも二度と触れない方がよいのか、距離感に迷っています

これは非常に繊細な問題です。コミュニケーションのプロとしての見解は、「触れ方」「タイミング」「関係性の深さ」によって答えは変わります。

もし、自然な流れで会話に入れられそうなときは、「あなたたちの生き方を大切にしているよ。」「私の時代は孫がいるのが当たり前の時代だったけれど、あなたたちがどう思っているのかが何よりも大切。」といったように、自分の気持ちも伝えつつ、相手の選択を尊重する姿勢を持つことが理想です。

一方で、「言葉にしただけで重く受け取られそう」と感じる場合は、あえて話題にしないことが愛情になることもあります。

-孫の有無にかかわらず、息子夫婦との関係を良好に保つための考え方を教えてください

たとえば、以下のような方法が挙げられます。

・息子夫婦のライフスタイルや価値観を聞いてみる

・「孫がいないからこそできること」を一緒に楽しむ(旅行や趣味、将来設計の話など)

・定期的な「ご飯会」や「近況報告LINE」など、家族としてのつながりを“ゆるやかに”持ち続ける

孫というテーマだけが、親子の絆をつなぐものではありません。むしろ価値観の違いを受け入れあえる関係こそが、「これからの時代の家族像」なのかもしれません。

◆鮎永麻琴(あゆなが・まこと)

大学時代にはプロスノーボーダーとしてW杯に出場し、世界ランキング20位を記録。卒業後は国際線CAとして13年間勤務。現在は、コミュニケーションスキルコンサルタントとして多くの人の悩みに向き合う。2020年にはTEDxFukuokaで「自由への切符」というテーマで登壇。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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