「俺もうすぐ30歳だよ?」 酔いに任せた不安と葛藤 「ベイビーわるきゅーれ」監督にぶちまけた本音がそのまま主演映画に
「俺もうすぐ30歳だよ?」
出会ってかれこれ10年超。直談判でつかんだ人気シリーズ主役の座。
人気フェイクドキュメンタリーシリーズ最新作『フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡[私闘編]』(10月10日公開)に主演する松本卓也(30)は、2年前の名古屋での泥酔の夜を思い出す。
■同志にぶちまけた本音
「30歳目前で、俳優としてどうなんだ?という自分の不甲斐ないキャリアもあって…。酒の酔いに任せて将来に対する不安をぶちまけました」
伝えた相手とは、映画監督の阪元裕吾と俳優の伊能昌幸。共に大学時代からの親友であり、松本も出演する『最強殺し屋伝説国岡』シリーズを作り上げた名コンビだ。
阪元監督は『ベイビーわるきゅーれ』で注目され、伊能も主演作『国岡』シリーズで俳優としてコアな人気を獲得しつつあった時期。松本は自分だけ遠く引き離されている焦りを抱えていた。
「『国岡』シリーズは僕が俳優としてレギュラーで出演している作品ですが、2人の活躍を見ていると、もう作られることはないのではないか?と勝手に思い込んでしまって…。僕がこれから俳優としてやっていくための新しい何かが欲しくて、阪元に『やろうや!やろうや!』と直談判していました」
そんな松本のために阪元監督が用意したもの。それが松本扮するポンコツの殺し屋・真中を主人公に据えた『フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡[私闘編]』だった。殺し屋としてうだつが上がらず、実家に帰った真中(松本)が人生の岐路に立つ姿を追う。
「名古屋の夜に僕が伝えたことを汲んでくれている内容で、真中が殺し屋稼業を続けるか辞めるか葛藤する様子は、俳優としての僕自身の心境が反映されていると思いました」
■共感し過ぎて思わず涙
真中が殺し屋を続ける決意を宣言するシーンでは、感極まって泣いてしまったという。
「阪元監督と伊能とは大学時代からの付き合い。ずっと一緒に映画を撮って来ました。役としてのセリフを超えて、友達として背中を押されているような気がして。泣きながらセリフを言っていました」
ところが本編内では別カットが使用されている。
「僕の熱い思いをよそに、阪元監督からは『おいおい、そんなに泣くことか!?』とのダメ出しが…。完成作には真中としての気持ちを優先したカットが使用されています。でも絶対そっちの方が正解だった」と阪元監督に全幅の信頼を置いている。
真中というポンコツ殺し屋の再生をフェイクドキュメンタリーの手法で描いたバトルアクションではあるが、阪元監督、伊能、松本の決意を捉えた青春映画としても見る事が出来る。これからも夢を追っていたい。彼らの大学時代からの変わらぬ思いが、殺し屋たちのセリフに滲む。8月下旬に行われた大阪アジアン映画祭での上映の際には、感涙する観客もいたという。
松本は「阪元監督や伊能は僕が役者を辞めない限りはずっと関わっていく友達だと思っていたけれど、その認識も最近になって変わってきました。友達というよりも、面白い作品を発信していくための大切なチーム。これからも一緒に歩んでいきたいです」と志を新たにしている。
(まいどなニュース特約・石井 隼人)





