住宅ローンで加入した団信は「保険料控除の対象外」、節税のため生命保険でまかなったほうがよかった?【FPが解説】

みなさんは住宅ローンを組むときに加入することをすすめられる、団体信用生命保険(以下、団信)のことをご存知でしょうか。団信とは、もしも住宅ローンの利用者が死亡したり高度障害状態になったときに保険金が支払われ、その保険金を住宅ローンの返済に充てる仕組みです。

ところが最近住宅ローンを組んだAさんは、会社で年末調整をしたところ団信が「生命保険料控除」の対象外だということを知りました。「生命保険と同じように、死んだらお金がもらえるはずなのに、なぜ?」とAさんは納得できません。

生命保険控除の節税メリットを狙うため、団信ではなく、民間の生命保険に住宅ローンの金額分加入した方がよかったのではないかと思い悩んでいるようです。はたしてそのような選択はありえるのか、保険に詳しいFPの鳥居佳織さんに聞きました。

■団信は生命保険料控除の対象外

--団信が生命保険料控除の対象外と知って、驚かれているようです。

団信の正式名称には「生命保険」という言葉が含まれているので、確かに分かりにくいですよね。団信と生命保険の違いを整理してみましょう。

   ◇   ◇

▽保険金額

団信:住宅ローンの残債分の金額

生命保険:契約者が決めた金額

▽保険金の受取人

団信:住宅ローンを契約している金融機関

生命保険:契約者が定めた受取人

▽保険料支払い

団信:住宅ローンを契約している金融機関が支払う(※特定条件下で金利に含まれる)

生命保険:契約者が支払う

▽保険料の金額

団信:住宅ローン契約によって異なる

生命保険:保障期間、年齢や性別によって決定する

▽保障期間

団信:住宅ローン完済時まで

生命保険:契約者が決めた期間まで(例:終身、60歳まで、10年など)

▽解約

団信:解約不可

生命保険:解約可能

▽生命保険料控除

団信:対象外

生命保険:対象

   ◇   ◇

生命保険料控除の対象となるのは、保険金受取人が契約者かあるいは配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)である場合の保険料です。

しかし、団信の契約者は住宅ローンを契約している金融機関であり、保険料も負担しています。保険金受け取りも同じ金融機関となるため、団信は生命保険料控除の対象外となるのです。

■団信と生命保険を比較するときの注意点

--生命保険料控除を受けられないのであれば、団信に加入せずに、民間保険で住宅ローン分の保険に加入した方が良かったのではないかと、Aさんは悩んでいるようです。

銀行で住宅ローンを借りる場合は、団信への加入が必須です。一方で、フラット35の場合は加入が任意ですので、団信のかわりに民間の保険を選ぶことも可能です。

民間の保険に加入すれば生命保険料控除は受けられます。ただし、生命保険料控除には上限があるため、すでに他の生命保険に加入している場合はその限度を超えて控除を受けることはできません。

--これまで自分が入っていた生命保険に加え、住宅ローンの金額をすべてまかなうような大きな負担額の生命保険に入ることになるので、どこまで控除の恩恵があるのか気になりますね。

その通りです。また相続税に関しても違いがあります。団信の場合、保険金は金融機関が受け取り、残債の返済に充てられるため、相続税の対象となりません。しかし生命保険の場合、500万円×法定相続人の数までが非課税となりますが、それを超えると課税対象になります。

--相続税がかかることで、ローンの返済に影響が出ることも考えられますね。

ほかにも団信に加入することで住宅ローンの金利が優遇されることもあるので、生命保険料控除だけでなく、両方のメリットとデメリットを全体的に考慮することが大切です。

--もしも団信の代わりに生命保険に加入するなら、どんな保険がおすすめですか?

住宅ローンは毎月返済が進むため、保険金が徐々に減少する収入保障保険や逓減型定期保険がおすすめです。これらはローンの残高に合わせて保障が減少していくため、無駄な保険料の支払いを避けられるメリットがあります。

--実際に団信に入らずに、生命保険料控除を受けるために民間保険で代替するようなケースはあるのでしょうか?またそのような選択肢は一般的なのでしょうか?

団信に加入せずに民間保険を選択する人もいます。しかし一般的には住宅ローンを組む際には、団信に加入する人が多いです。そもそも民間保険での代替が可能であることを知らない人や、すでに生命保険料控除を上限額まで加入している人、民間保険に加入することで支払いが増加する可能性がある人は団信を選びます。また繰り返しになりますが、銀行住宅ローンの場合は、団信への加入が必須となるため、そのような人は選択肢が限られています。

このような理由から一般的には団信に加入する人が多いといえますね。団信か民間保険のどちらかを選択する際に、生命保険料控除の理由のみで代替するケースは少なく、個人の状況や保険料などを総合的に考慮して判断しているといえます。

■団信と生命保険のどっちがいい?

--生命保険料控除だけでなく、リスクに備えるためによく考えないといけないのですね。

そうですね。どちらに加入すればよいかは個人の状況や、住宅ローンの契約内容によっても異なります。

団信は主にローン返済ができなくなった場合に備えるためのもので、生命保険は遺された家族の経済的リスクに対応するための保険です。それぞれ特性が異なるため、可能であれば両方に加入しておくことがおすすめです。ただし、どちらか一方を選択する場合は、それぞれのメリットとデメリットを十分に比較検討して決定することをおすすめします。

◆鳥居佳織(とりい・かおり)/2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大手生命保険会社にて8年間勤務。保険コンサルティングでは個人、法人、問わず生命保険や損害保険を幅広く販売。

金融ジャンルの専業ライターとして活動中。金融全般に関するさまざまな相談に応じてきた経験があり、実体験ベースでの執筆が得意。主に保険、年金、資産運用など幅広く執筆している。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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