「国保より保険料が割安にできるかも!」会社を退職しても→加入していた健保を継続…知っておきたい「任意保険制度」【FPが解説】

会社を退職するとき、それまで会社で加入していた健康保険を継続できることをご存知でしたか? 場合によっては、国保より支払う保険料を割安にできる可能性もあります。「任意継続制度」について、メリット・デメリットを踏まえながら、手続きの方法までわかりやすくFPが解説します。

■任意継続制度とは

勤めていた会社を退職するとき、ある条件を満たすと、退職後2年を上限に、今までの健康保険に継続して加入することができます。これを「任意継続制度」と言います。(以下「任意継続」とします。)

任意継続の利用条件は以下の通りです。

・健康保険の被保険者期間(加入期間)が継続して2か月以上あること

・資格喪失日(退職日の翌日等)から20日(20日目が土日・祝日の場合は翌営業日)以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること

■国民健康保険との違い

それでは、任意継続した場合と国民健康保険に切り替えた場合の違いはなんでしょうか。

主な違いとして保険料があります。

任意継続すると、それまで会社と折半していた保険料は全て自己負担になります。

これだけ聞くと「えっ?今までの倍払わなくちゃいけないの?」と思うかもしれませんが、国民健康保険は前年の所得で保険料が決まってきますので、それまで年収が高かった人ほど、(翌年以降所得は少なくなるのに)高額な保険料を支払わなくてはならないということになる可能性があります。

任意継続の保険料はそれまでの標準報酬月額に応じて決まりますが、保険料の上限が定められていますので、たとえ全額自己負担になっても任意継続のほうがお得になる場合があるのです。

■任意継続制度を利用するメリット

任意継続をすると、加入している健康保険組合のサービスがそのまま継続して受けられます。具体的には以下のような内容です。

・健康診断が受けられる

・組合契約保養所を利用できる

・家族を扶養に入れられる

これまで通り健康診断が受けられるのは安心ですし、組合が契約している保養所があれば、そこにも加入者としてかなり安価に宿泊・利用ができます。

他にも健康促進のためのイベントや、レジャー施設のイベント等を定期的に開催しているところもありますが、それらの案内が退職後自宅に届くようになります。

また、何より捨てがたいのは、家族をこれまで通り扶養に入れられるということです。

一方、国民健康保険では家族を扶養に入れることはできませんので、家族全員分の保険料がかかります。

また、健康保険組合からは抜けることになりますので、上記のようなサービスも当然受けられません。

■任意継続制度を利用するデメリット

任意継続はこれまでの健康保険をそのまま引き継ぐ形にはなりますが、以下のようなデメリットもあります。

・傷病手当金や出産手当金が受けられなくなる

・保険料が全額自己負担となるので保険料負担が増す

・保険料を滞納すると即資格喪失となる

上記からもわかる通り、退職後に出産を考えている方は要注意です。

また、メリットの裏返しにもなりますが、それまでの年収によっては国民健康保険にしたほうが、保険料が安くなる場合もあります。

さらに、保険料は今まで会社が給与から天引きして代わりに支払ってくれていたわけですが、退職後は自分で支払わなくてはなりません。

まとめて前納すると安くなる制度もありますので、余裕のある人は前納制度を活用すると良いですが、毎月支払いをしていく場合はうっかり滞納してしまう危険もあります。

保険料を滞納すると、任意継続被保険者としての資格を喪失してしまいますので注意が必要です。

■任意継続と国民健康保険はどっちが安いの?

任意継続と国民健康保険、どっちが安いかについては、年収や健康保険組合によっても保険料の上限が異なりますので、人によって異なります。

ただし、扶養家族がいる人や、(一概には言えませんが)目安として400万円以上だった人は、任意継続を選んだ方が割安になることもあります。

実際に、筆者も会社員からフリーランスとなり、任意継続の手続きを行いましたが、筆者の場合は以下のような結果となりました。

   ◇   ◇

【退職前の状況】

筆者と配偶者(夫)の二人暮らし。共働きで年収は同じぐらいだったが、それぞれの事情でほぼ同時期に退職、お互いフリーランスになることに。

筆者は退職後の収入の目途が立っていたが、主人は新たに自分で事業を立ち上げることとなり、いつから収入を得られるかわからない状態だった。

  ↓

【任意継続の選択】

退職前に勤務していた会社にて加入していた健康保険組合のページを調べ、これまでの自分の標準報酬月額に応じた試算額よりも、任意継続の上限のほうが安いことが判明。

また、配偶者(夫)の今後の収入の見通しが不透明だったため、配偶者(夫)を筆者の扶養に入れることに。

  ↓

【結果】

仮に国民健康保険を選択すると2人で月に6万円弱の保険料がかかるところだったが、任意継続を選択して配偶者(夫)を扶養に入れたことにより、合計で月約3万円の保険料負担となった。

   ◇   ◇

国民健康保険にした場合の金額については、お住まいの市区町村のホームページでシミュレーションできますので、ぜひ調べてみてください。

また、これまでは任意継続後2年間は途中で抜けることはできなかったものの、今年2023年より、好きなタイミングで任意継続をやめることも可能になったので、仮に配偶者の収入が所定の基準を超えて扶養を外れるときに国民健康保険への切り替えができます。

※上記の事例はあくまでも筆者のケースであり、実際の金額等についてはご自身でご確認頂く必要がありますのでご注意ください。

■任意継続を利用する際の手続きについて

任意継続を選択する場合は、以下の方法で手続きします。

   ◇   ◇

会社が加入している健康保険組合のホームページから「任意継続被保険者資格取得申請書」をダウンロードし、記入後その組合宛に郵送する

   ◇   ◇

…これだけですので、簡単ですよね。

ただし、被保険者の資格を失った日(退職日の翌日)から20日以内に提出という期限がありますので早めに郵送しましょう。

また、もしも今まで扶養でなかった家族を、任意継続するにあたって新たに扶養に加える場合には、退職前にまず会社で扶養追加申請をする必要があるので、忘れずに申請する必要があります。

ただ、もし扶養追加申請前に退職してしまった場合でも、会社に相談して承諾がもらえれば後から手続きすることも可能ですので、諦めずに相談してみてください。

■申請書を提出したら

任意継続申請手続きが済むと、すぐに新しい保険証が送られてきます。

また初回の保険料納付書も同封されていますので、期限までに支払いましょう。

翌月以降も納付書が届くようになりますが、前納制度を利用すると保険料が少し安くなりますので、お金に余裕のある方はまとめて前納がお得です。

たとえば、とある保険組合の場合、6か月前納で約2,000円、12か月分前納で約7,700円安くなります。(退職前の標準報酬月額を32万円と仮定)

■無事に手続きできても…見落としがちな点とは

健康保険料に関してはこれまで触れてきた通りの手続きを踏めば、あとは支払い漏れのないように納付するだけですが、もうひとつ忘れてはいけないのが「国民年金保険」の手続きです。

任意継続は、健康保険はそのまま引き継ぐことができますが、厚生年金については引き継がれませんので、会社員を辞めたら国民年金第1号被保険者への変更手続きが必要となります。

また、仮に家族がいる場合は会社員を辞めた時点で家族全員分の年金保険料を支払っていくことになります。

国民年金保険料は全国一律で令和5年度の場合は、1人あたり月額16,520円です。

国民年金第1号被保険者への変更届の提出は、退職日の翌日から14日以内が期限ですので、忘れずに行いましょう。

■まとめ

▽任意継続は扶養家族がいる人や、目安として年収400万円以上あった方におすすめ

▽出産手当金が出なくなるなどのデメリットもあるため、その時の自分の状況に合わせて判断しよう

▽任意継続申請の提出期限は、退職の翌日から20日以内

▽国民年金保険は別に手続きが必要!第1号被保険者への変更届け出を忘れずに

   ◇   ◇

会社を辞めるときには各種手続きの他にも業務の引継ぎなどで慌ただしくなりがちですが、所定の手続きを踏むことにより、退職後の健康保険料が大きく抑えられることもあります。

忙しい中でもまずはしっかりシミュレーションを行い、ご自分の状況を確認してみてくださいね。

(まいどなニュース/FPオフィス「あしたば」)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス