家に入ってくるようになった地域猫を家族に迎えて…何にも代えがたい19歳のご長寿猫との日々
猫が老いるほど、愛情が募っていく--。そんな気持ちを抱えながら日々、愛猫にお仕えしている飼い主さんは多いはず。チビの召し使いヒロさんも、そうだ。19歳の愛猫チビちゃんに対し、「願わくば、いくつまででも生きていて欲しい」との言葉をかける。
■家に入ってくるようになった地域猫を“うちの子”にして
チビちゃんは今から19年前、野良猫の母親が産んだ子。生まれた場所は、工場地帯の中にある住宅地。小さな地域であったため、近所の人からかわいがられて育ち、やがて、保護活動をしているボランティアが、母猫と共にTNRをした。
「産まれた時から近所のみんなで、“チビちゃん”と呼んでいました。兄弟猫は、クロちゃんでした」
TNR後、チビちゃんは地域猫として、外で他の猫たちと暮らしていたが、やがて、ずっとご飯をあげながら見守っていた飼い主さん宅に入りたがるように。
初めは部屋で少しくつろいだのち、満足して外に出ていっていたが、家の中で過ごす時間がだんだん長くなり、ついには一緒の布団で寝るようになったそう。そうした姿を受け、飼い主さんはチビちゃんを“うちの子”にしようと決意した。
お迎え当初、チビちゃんは10歳だったが、まだまだ活発。外で存分に遊び、家に帰ってくるのが日常だった。
「よく、外からネズミやスズメを捕まえて帰ってきましたが、チビちゃんは歯がなかったので、致命傷を負わせることなく、逃がすことができました」
■完全室内飼いになり穏やかな老後を送りはじめた
その後、チビちゃんの日常は、飼い主さんの引っ越しを機に変化。新居での生活をスタートさせた飼い主さんは安全面を考慮して、チビちゃんを完全室内飼いにした。
身の安全を考えてくれた飼い主さんの気持ちを汲んだのか、年齢的なものもあったのか、チビちゃんは完全室内飼いをすんなりと受け入れ、家の中で落ち着いて暮らすようになったという。
「階段を走って昇り降りするくらい、まだまだ元気。でも、高いところにジャンプすることは苦手になってきたので、寝床にしているお気に入りの椅子を、人の膝より低い高さにしました」
そう語る飼い主さんは、ベランダでのんびりと日向ぼっこができるようにし、チビちゃんがストレスのない生活を送れるように工夫してもいる。
「チビは19年間、ずっと病気もせず健康。動物病院で治療したことがありません。今のところ、健康診断の結果も問題がありません」
歯がないため、ぼーっとしたり力を抜いたりすると舌が出るところや、自分の手で顔を洗うのが面倒な時には人の手を舐め、顔をグリグリして洗うところなど、チビちゃんには飼い主さんしか知らないかわいさがたくさん。
日々、愛くるしい姿を目にするたび、飼い主さんの中ではチビちゃんへの愛がより募っていく。
「成猫は子猫のように遊ぶことはないですが、いつも穏やかに寄り添ってくれる優しさがたまらなくかわいいなと思います」
愛猫と共に過ごせる1分1秒を、これからも飼い主さんは大切に心に刻んでいく。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)





