譲渡は難しい「否」のサインがついた元野犬 パニック噛みを克服できたのはスタッフの愛情 7カ月が過ぎ突然膝の上でゴロン 

野犬や元飼い犬などを収容する愛護センターには、ワンコに「否」という文字がつけられていることがあります。保護犬の譲渡活動を行う団体などがワンコの引き出しに訪れた際、「ゆくゆくは譲渡できそうなワンコかどうか」を愛護センターが見極め「譲渡は難しいだろう」として「否」と判断するのだそうです。

東京・足立で犬猫の保護活動を行う保護犬カフェPETS。こちらのスタッフが引き取った元野犬のミックス犬・かりんも「否」がついたワンコでした。相応の気性難のワンコでしたが、同団体でたっぷりの愛情を受け、少しずつ幸せな生活へとつながっていきました。

■抱っこ・シャンプーで、パニック噛み

かりんは当初、姉妹犬のあんずというワンコと2頭セットで引き取られました。比較的穏やかな性格のあんずは譲渡先が間もなく決まりましたが、かりんはその気難しい性格から当初からハードルが相当高いとスタッフは感じていました。

かりんを連れてきた当日、抱っこすればガブッ。シャンプーすればガブッ。あまりのビビリな性格から、恐怖に耐えられずに「パニック噛み」をしてしまうのでした。

あんずとはまるで違う性格です。でも同団体のスタッフはこれでめげる人ではありません。

「愛護センターでは『否』のワンコだったけど、でも、私にとっては『否』じゃないよ。かりんは時間がかかるけど、絶対に家庭犬になれるはず。一緒にがんばっていこうね!」

そんな風に明るくかりんに接するスタッフは、かりんが家庭でも過ごすことができるよう、できるだけ多くの時間を一緒に過ごすことにしました。

■散歩では、吠えながら噛みついてくる

しかし、かりんの心を開くのは、たやすいものでもありませんでした。

散歩の練習をしようとかりんにハーネスをつけようとするとまたガブッ。

仕方なくできるだけ抜けにくい首輪に変え、ややキツめにかりんの首に巻きました。かりんの性格から、万一首輪が抜けたら、逃げ出すことは避けられないからです。さらに万一脱走し捕獲しようとすれば、その人間を攻撃してしまうことも考えられます。「脱走だけは絶対に避けなければならない」と、スタッフも緊張して散歩に出かけました。

最初はヒヤヒヤしながら首輪で散歩していましたが、少し馴れたところで、ハーネスに変えさらにトリプルリードに変えました。

すると、かりんはここでもまたあまりの恐怖・怒りから、吠えながら噛みついてくるという攻撃モードに。散歩に出ても吠えながら前に進んでくれません。その場をグルグル歩き回ったり立ち止まったり、草陰に隠れたりと、とにかく嫌がります。

しかし、スタッフはそれでも諦めません。「否」をつけられたかりんを、なんとしてでも家庭犬に成長させたい。その一心で根気強く接しました。

■7カ月を過ぎたある日、突然スタッフになつき始めた!

同団体で引き取って7カ月を過ぎたかりん。

人嫌いは変わらず、抱っこも克服できぬままでしたが、ある日のこと。避妊手術を終えたかりんのケアのため、スタッフはかりんの横で就寝していました。すると、かりんが突然ゴロンとヘソ天でスタッフを甘噛みし、さらには膝の上に寝っ転がってきました。突然の出来事にスタッフはびっくり! 目をこすりながら「もしかして、かりんとは別のワンコを病院から連れて帰ってきてしまったのではないか」と思うほどでした。

「ならば!」と、スタッフはかりんをシャンプーすることにしました。しかし、スタッフとかりんの緊迫の戦いはまたもや繰り広げられました。完全に心を開いてくれたわけではないことを実感するスタッフでしたが、それでもとてもうれしかったそうです。スタッフの愛情がかりんに伝わり、ほんの少しだけ心を開き、甘えてくれるようになったことが。

■里親募集をやめ、スタッフの家族犬に

当初かりんは里親さんを募集していましたが、やはりそう簡単に心を開いてくれるワンコではありません。何よりもスタッフ自身がかりんへの愛情が深まったことで、里親募集をとりやめスタッフ自身の家族犬にすることを決めました。そんな思いを胸に、スタッフはかりんを抱きしめようとしましたが、当のかりんはスルリとその腕を抜けてやっぱり逃げてしまうのでした。

なんとももどかしいですが、このツンデレな対応もまた「かりんのかわいいところ」とスタッフは笑いながら語ってくれました。

■相変わらず人間が苦手で、忍者のように逃げるかりん

現在、かりんはスタッフの家族犬となり、保護犬カフェにも顔を出すことがあります。

保護犬カフェでは多くの保護犬たちと過ごすことになるわけですが、あれだけ吠え噛んでいたかりんも、ここではおとなしく過ごしています。スタッフがいることはもちろんですが、野犬特有の性格として「他のワンコは大好き」ということもあり、比較的安心して穏やかに過ごせているのかもしれません。

初めて訪れた人間を見て遠巻きに客をジッと見つめるかりんですが、客との距離が近づくとスルスルーッと消えていき、対面の壁からまた客をジッと見つめます。その動きはまるで忍者。絶妙の距離の取り方ですが、こんな動作もまた「かりんの個性だ」とスタッフは言います。

「もう1頭の看板犬・めごとはまるで性格が違うのかりんですが、ワンコごとに性格が違うのは当たり前です。これからもかりんの抱きしめ拒否にめげず(笑)、一緒に楽しい時間を過ごしていきたいと思っています」

PETS

https://ameblo.jp/pets-adachi203/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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