動物用の罠にかかって3本足になった元地域猫 保護された家で“自分らしいニャン生”を楽しむ

「三つ脚も個性」との言葉を愛猫いっくんにかけるのは、飼い主のitsuki3ikkunさん。地域猫だったいっくんは動物用の罠にかかり、後ろ足を1本なくしてしまった。だが、失くしたものではなく、残ったものを大切にしながら強く生きるいっくんの姿に飼い主さんは多くのことを教えられているという。

■動物用の罠にかかって片足を失った元地域猫

撫でられるくらい人馴れしていた、地域猫のいっくん。ボス猫である反面、ガールフレンドの猫には先にご飯をあげ、自分は残ったものを食べるという優しさも持っていた。

飼い主さんはある日、そんないっくんが道端の草むらに倒れているところを目撃。

「大丈夫かと思い、後でもう一度、見に行ったらいなくなっていたので、寝ていただけかと思ったんですが、おそらくこの日、罠にかかったのだと思います」

罠によって、片方の後ろ足は骨が露わに。人馴れしていたことから抱っこでの捕獲を試みたが、いっくんは人間不信にもなっており、手を噛まれ、保護は失敗に終わった。

そこで、飼い主さんはご飯を置き、捕獲機を設置。3日後に保護することができ、すぐに動物病へ連れていった。

「病院の先生から、罠はイノシシ用か養鶏場などにあるガチャンと挟むものだろうと言われました」

いっくんはすぐに手術が必要な状態だったが、衰弱しており、耐えられそうな体ではなかったため、1週間ほど栄養をつけてから、太ももの付け根から足を切断。術後は2週間、入院をすることとなった。

抜糸が終わったのは、手術から1カ月後のこと。自宅に迎え入れた当初は、半月ほどケージで過ごしてもらい、家という新しい住処に慣れてもらった。

初めの頃は痛みがあり、体調が万全ではなかったため、いっくんは一日中寝て過ごしていたそう。だが、だんだん起きている時間が長くなり、ケージからお部屋に出られるように。迎えてから1カ月経った頃には、部屋で自由に生活し始めた。

「高い所に登れません。キャットタワーを買いましたが、踏み台を置いても登ろうとはしませんでした。抱っこして乗せてあげると、窓から外を見ています」

世間一般で障害と呼ばれるものを負った猫には、可哀想という視線が向けられることもあるが、飼い主さんはいっくんのことを普通の猫と変わらないかわいい子だと思っている。

「一度、3本足でも大丈夫なのかと病院の先生に尋ねたら、『動物は後ろ向きには考えず、あるもので生きようとするんです』と言われて、ハっとしました。心配ばかりで後ろ向きなのは私だなと。いっくんは強い子。3本足なのも、2度曲がっているかぎ尻尾も、いっくんにしかない特別な個性。特別な猫です」

高所には登ることは難しいが、いっくんは大好きなエビのけりぐるみを激しく片足で蹴ったり、走るのが早かったりと猫らしい生活を謳歌している。

甘えん坊な一面もあり、飼い主さんが仕事から帰宅すると、鳴きながらお出迎え。まるで「遅いよー!」と怒っているみたいに思え、飼い主さんは嬉しくなるという。

「一時期、私を無視した時期がありました。原因は、地域猫をかわいがっていたことへの嫉妬でした。『いっくんは特別。ごめんね』と言い続けて、やっと元の関係に戻れました。すごく悩みましたし、辛い1週間でした…」

いっくんを深く愛している飼い主さんは愛猫と同じ痛みを味わう猫が現れないよう、動物用の罠がなくなってほしいと願っている。

足を失っても、人をもう一度信じ、自分らしく日常を楽しむいっくん。その姿から、人間が教わることは多い。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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